Instagramで話題のマンガの完結編となる『毒親に育てられました3 親子の縁を切るまでの話』(KADOKAWA)が発売された。
本シリーズは、著者のつつみさんが毒親である母に育てられた実体験が基になっている。つつみさんは母の呪縛から逃れるために、短大入学を機に寮に入り、少しずつ母と距離を開けていこうと試みる。それでも母は執拗に干渉してきて、自由を手に入れるまでには長い道のりがあった......。
つつみさんの母はシングルマザーで、家ではずっと二人きり。つつみさんは小学校に入る前から、母の暴力や暴言を受けて育ってきた。壮絶な虐待体験は1・2巻で描かれている。
本書で描かれるのは、高校時代からはじまり短大を経て、社会人になり結婚するまでのエピソードだ。つつみさんはいかにして母の呪縛をふりほどき、自由とあたたかい家庭を手に入れられたのか。その道のりは、決して簡単ではなかった。
つつみさんが高校生になると、母よりも腕力が強くなり、暴力での支配はなくなった。しかしそのかわりに、母は「心」でつつみさんを支配するように。「今までの養育費1000万円を返す」という誓約書を書かされるなど、母の虐待は続き、つつみさんは精神的に追い詰められていく。
つつみさんは短大入学と同時に寮に入り、ようやく母の機嫌に振り回されない生活を手に入れた。しかし、家を離れてから母の連絡が急増。返信が遅れると怒られ、ある日うっかり2時間返信を空けると寮に直接電話が......。周りにも迷惑が及んでしまい、なかなか母を断ち切ることができない。
そんな中、短大の授業で転機が訪れる。児童心理学の講義で虐待についての回があり、教科書に書かれている虐待の種類や子どもの心理状態が、ほとんど自分に当てはまっていたのだ。「もっと知りたい」と思い、短大の図書館で虐待に関する本をたくさん読んだつつみさん。「しつけは家庭に任せるもの」「親であれば我が子をかわいがるはず」という世間の思い込みで、虐待が気づかれづらくなっていることを知り、「気づかれないのは母と自分のせい」と思っていたつつみさんの中の認識が変わっていった。
一方で、「虐待を受けた者は自分の子どもへの虐待をする可能性がある」という記述もあり、「自分も毒親になってしまうかも」という不安を抱くようになる。つつみさんはこの不安をどのように乗り越え、母と訣別したのだろうか。
つつみさんはKADOKAWAのインタビューに対し、短大に入学してから「一気に生活も価値観も人間関係も変わりました」と語っている。
「短大に入るまで、母からはひどい言葉ばかり浴びせられて育ったため、母から離れて暮らして他の人と接していくたびに『私のまわりの人たちってなんでこんなに優しいの!?』と驚きました。母と離れて暮らして初めて、母の異常さに気付くことができました。」
母の虐待で心を支配されている間、つつみさんは「私はどうしようもない出来損ないだ」「母から離れるには、私のことを丸ごと受け止めてくれる人が現れないと無理だろう」と思っていたそう。しかし、新たな環境と人間関係を得て、こんなふうに気づくことができた。
「ある時にハッと気付きました。もう既に、私のことを受け止めてくれる人たちに出会っていたのだと。何で今までの出会いを無かったことにしていたんだろう?と思ったのと同時に、私はいろんな人たちにこんなに大切に想われていたんだとわかり、私自身も変わらなければと思いました。」
本書で描かれる、大人になったつつみさんは、冷静に物事を判断し、周りの人を信頼しながら行動していく強さが印象的だ。つつみさんにとっての「強さ」とは。
「私が思う『強さ』とは、人の弱さや痛みを理解し物事を中立的に考えられる心を持ち、他人の優しさを当たり前と思わず誠意を持って受け止めることができる。自分を信じて前に進むことができる。それが本当の意味での『強さ』なんじゃないかと思います。」
本書ではマンガのほかに、弁護士の安孫子健輔さんとつつみさんの対談も収録されている。「毒親と絶縁するにはどうすればよいのか」「周りの人はどんな対応をすればよいか」など、今すぐ役に立つ内容を法的な視点から解説してくれている。
毒親をもつ人にとっては、「自分だけじゃない」と思える点でも、どう行動していけばよいかがわかる点でも、とても参考になる一冊のはず。うちは毒親ではなかったという人にも、虐待が子どもにどのような影響を及ぼすか、社会はどうしていけばよいのかを考えるきっかけになる作品だ。
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