「心理的安全性」という言葉を、最近目にすることが増えた。
もともとは1965年に誕生した経営学の言葉で、グーグル社などの影響で注目を集め、成果を上げるチームに必要なものとして最近も話題になっている。
この心理的安全性をつくるための実践的なフレーズを集めた1冊が、『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)だ。
著者の原田将嗣さんは、組織・チームの「心理的安全性」向上に関する組織開発などを行う、株式会社ZENTechのシニアコンサルタント。特に、「組織・チームで使う言葉」をテーマにした研修が、わかりやすくかつ実用的と好評だ。
監修を務める同社の取締役・石井遼介さんは、14万部超のベストセラー『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)の著者でもある。
今回は、2022年8月6日に発売された『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』から、「心理的安全性」の概要やそれを生み出す4つの要素について紹介したい。
チームの心理的安全性とは、「対人関係のリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと」。ハーバード大学のエドモンドソン教授が定義した言葉だ。本書では、これについて「単にチームメンバーの仲が良いということではありません」と、説明している。
仲が良すぎる状態だと、成果より人間関係が重視され、言うべきことが言えない状態になってしまう。反対に仲が悪すぎれば、足を引っ張りあったり、自分中心・他責的な考え方に陥ったりしやすいという。
「心理的安全性が高いチームとは、仲が『悪すぎる』でも『良すぎる』でもなく、目指すゴールや成果のために『健全な意見の衝突(ヘルシーコンフリクト)』が起こせるチームです」
つまり、「誰もが素直に、思ったことを言い合える」状態だ。この心理的安全性が確保されていれば、ミスの報告のように話しにくいことでも素早く情報共有ができる。さらに新しいことへの挑戦が増え、働くことで満足感や充足感で満たされるようになるとのこと。
では、この「心理的安全性」をつくりあげるにはどうすればいいのだろう?
本書で提唱されているのが、「4つの因子」--「話助挑新(わじょちょうしん)」だ。それぞれ、次の4つの頭文字である。
・話 話しやすさ
・助 助け合い
・挑 挑戦
・新 新奇歓迎
これは、ZENTechが開発した、独自のサーベイシステム「SAFETY ZONE」(R)を使って導き出したもの。日本の組織を6000チーム以上計測し検証を重ねた結果、これら4つが心理的安全性を高めるために重要とわかった。
まず、「話しやすさ」。雑談を含めた情報共有の「量」、そして「質」が大切だという。「質」とは、たとえば「言いにくいけれど、仕事を前に進める上で大切なこと」が発言され、かつ歓迎される場所が、この「話しやすさ」因子が高い環境といえる。
次の「助け合い」因子は、チームワークの根本となる因子。お互いに助け合える環境のことだ。日常的にリーダーや同僚と相談でき、ミスやトラブルがあったときも個人を責めるのではなく、解決に向けて建設的な対話ができる状態とされる。
「挑戦」因子は、挑戦した結果の前に、挑戦したことそのものが歓迎される周囲の環境のこと。これがあればアイデアや企画が出やすくなり、チーム内の挑戦した数つまり「挑戦の総量」を増やせるという。
これら3つは「環境」についての要素だが、最後の「新奇歓迎」因子は、人にフォーカスしている。
メンバー1人ひとりの強みや個性、新しい視点などを受け入れ、「まとはずれ」なこともむしろ歓迎するという姿勢だ。これがある組織は、多様性をうまく活用することに優れているそう。
本書では、これら4つの因子を高めるための、すぐに実践できるフレーズを55例にわたって紹介している。反対に、使うことでチームにマイナスの影響を与えてしまう「NGワード」もわかる構成だ。
次回は、同書から「職場の風通しを悪くするNGワード」について紹介する。
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