ぼくは世界の美しいものだけを見る、少なくともそう努めてやまない――
「自閉症ゆえに文章が書けない」と教師から言われたこともあったという、ダーラ・マカナルティさん。しかし、「書けない」どころか、1行目から胸をわしづかみにされる。力強く、豊かな表現力に満ちた14歳の少年の文章からは、ほとばしる「生」を感じる。
ダーラさんが、同じく自閉症の家族とともに北アイルランドの自然を全身全霊で体感する1年間の記録、『自閉症のぼくは書くことで息をする 14歳、ナチュラリストの日記』(辰巳出版)が、2022年7月12日に発売された。世界17か国で出版が決定している。
本書は、イギリス最優秀ネイチャーライティングに贈られるウェインライト賞、そのほか複数の文学賞を史上最年少で受賞している。さらに、ダーラさんは、英国鳥類保護協会から最も権威あるRSPBメダルも史上最年少で授与されている。
彼ならではの世界の見え方は鮮やかで美しい。一部を紹介しよう。
14歳、自閉症のぼく 1年間の日記
「この日記はぼくの世界の移り変わりを、春から冬にかけて、家や自然のなか、ぼくの頭のなかを舞台につづるものだ。北アイルランド西部のファーマナ県から東部のダウン県へと道をたどり、住み慣れた家との別れや土地と景色の変化、ときには五感と心を根こそぎ持っていかれる体験も記していく。(中略)心はナチュラリスト、頭は科学者志望、体は自然界への無関心と破壊行為にとっくにうんざりしている人。この日記のページからあふれるくらいに、野生の生き物たちとのつながりを表したり、ぼくなりの世界の見方の説明に努めたりして、ぼくらが家族としてどんなふうに嵐を乗り切るかを描きたい」――プロローグ より
自閉症のぼくに見える世界
「ぼくは世界の美しいものだけを見る、少なくともそう努めてやまない。ぼくらを取り巻く生命にとても引きつけられる、とてもぐっとくる。自閉症のぼくは何かにつけて感じ方が激しい。喜びのフィルターがない。まわりとちがっていたり、楽しくてはちきれそうになったり、毎日得意の絶頂だったりするのを気に入らない人はたくさんいる。ぼくは好かれない。でも高ぶる気持ちをしずめたくない。だってそうでしょう?」――第2章 夏 より
壊れゆく自然への想い
「ぼくはいつもこの問題と闘っている。心臓の鼓動がトンボの翅(はね)みたいに速くなることもあるし、何もしないことへの絶望感を表現する場がなくて、精神的にかなり苦しい。自然界との強い結びつきはそんな弱気をやわらげてくれる。自然のなかに身を置いていると、自分のことばかり考えるのではなく、まわりの生物に気づきやすくなる――木、植物、鳥や(運がよければ)仲間の哺乳類。そういう出会いのなかでぼくらは喜びを感じるし、たぶんそんな瞬間にはっきり理解する。ぼくらは誰もが、この壮大な美しさの世話をし、保護する立場にあるのだと。ぼくらは誰もが管理人(カストディアン)だ」――第4章 冬 より
本書の目次は以下の通り。
【目次】
プロローグ
春
夏
秋
冬
用語解説
謝辞
訳者あとがき
「みんなより世界を強く感じられる」というダーラさんのまなざしは、世界にひとつだけの特別なレンズだ。小さな命のきらめきから大自然のパノラマまでを鮮やかにとらえた、ダーラさんの世界の見え方・感じ方を、本書で体感しよう。
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