800年前にも、いまの私たちと同じ苦しみがあった。愛する人の死、引きこもり、友達がいない、死ぬのが怖い。こんなにつらいのになぜ生きなくてはいけないのか――。人々の悩みに、仏教が出したある答えとは......?
2022年3月5日、徳間書店から、『あなたは尊い 残念な世界を肯定する8つの物語』が発売された。
『あなたは尊い 残念な世界を肯定する8つの物語』は、数々の人気マンガを手がけた佐渡島庸平氏監修のもと、注目の新人・やじまけんじ氏が描いた、異色の仏道マンガ。仏教を足掛かりに、強く健やかに生きるための心の在り方を探った作品だ。
いまこの世に生きている私たちは、ただそれだけで尊い──。これは、いまからおよそ800年前、鎌倉時代に生きた僧侶・日蓮が文字どおり命を懸けて訴え続けた信念だという。本書ではその日蓮にまつわる史実を題材にした8つの物語が織りなされる。日蓮は何と格闘し、何を残そうとしたのか。その姿に、混迷の現代を生き抜くヒントがある。
この異色作ともいえるマンガの監修にあたったのは株式会社コルク代表取締役社長であり、マンガ編集者の佐渡島庸平氏。佐渡島氏は、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)をはじめ、数々の人気マンガを手がけたヒットメーカーだ。
なぜ佐渡島氏は本作で日蓮に焦点を当てたのだろうか。佐渡島氏はその思いをこう述べる。
「ぼくはこの数年、ずっと仏教に惹かれてきました。仏教は人の悩みをすっきり解消してくれるわけではなく、あくまで悩みと向き合う手助けをしてくれるものだと思うんです。多様な価値観に彩られた現代では、何事においても答えは1つではありません。それどころか答えは無限にあります。それはつまり答えは自分で考えなくてはいけないということ。でもそれって孤独な営みですよね。その孤独に無条件で寄り添ってくれるのが仏教だと思っています。なかでも日蓮、法華経の精神というのは力強いんです。現実から目を背けず、まっすぐ物事に取り組もうとする意志にあふれている。そういう意味では、とても現実的で現代的な思想性があります」
本作は、8編の短編マンガから成る短編集。それぞれのエピソードで、「別れ」「青春」「孤立」「老いと死」「憎しみ」「恩返し」「親子の情」「人間の弱さ」といった普遍的な事柄がテーマとなっている。
「お経は時代ごとにアップデートされてきました。そのときどきの時代性に呼応し、人々の心と精神に訴えかけてきた。このマンガでやりたかったのもまさにそれと同じです。マンガというカジュアルなスタイルをとることで、より多くの人に日蓮、法華経の精神をじかに感じてもらいたい。それが狙いでした。ただ実際に制作に着手してみると、その精神性をカジュアル化するという作業は、思いのほか難しいものでした。完成に漕ぎつけるまで、作者のやじまけんじさんをはじめ、スタッフたちは何度も試行錯誤を繰り返しました。でもそのおかげで、深みに到達できたと思います。年代を問わず、子どもから大人まで楽しんでもらいながら、人生について考えるきっかけになる仏道マンガになりました」(佐渡島氏)
また、本書の発行を記念して、監修の佐渡島庸平さん、漫画を担当したやじまけんじさん、そして、同じく監修を担当した日蓮宗僧侶・木村中一さんの3名を招いたスペシャルトークイベントが、2022年5月18日、代官山 蔦屋書店 シェアラウンジ内(3号館2階)で開催される。Zoomウェビナー機能を使用したオンラインライブ配信での参加も可能。紛争、災害、疫病に翻弄された鎌倉時代とあまりに相似する現在、このタイミングで本書を発行するに至った各氏の思いを存分に語り合うという。
自分を愛し、他者を愛し、混迷の現代をいかに肯定するか。あらゆる受難、悩みをどう乗り切るか。本作にはそのヒントが詰まっている。困難に直面する人々の姿を通し、生きる意味を見つめるマンガ集だ。
【目次】
■第1話 悲しい別れ
最愛の夫を喪った女は生きる気力を失っていた
■第2話 才能ってなんだ?
若者は引きこもり、何をすべきか途方に暮れていた
■第3話 思いが伝わらない
真面目で誠実な男。しかし周囲から孤立してしまう
■第4話 死の恐怖
病に苦しむ老人はどうしても死の恐怖を克服できない
■第5話 憎しみの正体
男は自分と意見の相容れない相手に刀を振りあげた
■第6話 恩返し
信念を曲げてしまった老師は愛弟子をまえに口ごもる
■第7話 お母さんの味
いつか訪れる親との死別。その悲しみの先にあるもの
■最終話 人間は弱い。でも...
人は弱く、時にずるい。全部ひっくるめて人間は尊い
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