新しい年が明けた。そこで、なんとなく下を向きがちな時代の気分を、グイッと上げてくれるようなパワフルな自伝を紹介したい。『「松之助」オーナー・平野顕子の やってみはったら! 60歳からのサードライフ』(主婦と生活社)だ。
著者は代官山・京都で行列ができる人気のパイとケーキのお店「松之助」のオーナー、平野顕子さん。専業主婦だった45歳のときに離婚、アメリカへの留学、料理の仕事、そして60代からのニューヨーク再婚ライフまで、パワフルでエレガントに年齢を重ねる平野さんの自伝である。
年を重ねて気づいたのは、人生はさまざまな「縁」によって織りなされていることでした。
人生とは、縁でつながり、縁に導かれるもの。
それを心に刻んで、みなさんにお伝えしたい!
やってみはったら!
本書では、「やってみはったら!」のエールに励まされながら、
どんなふうに縁を紡いでいったかをお話ししたいと思います。
(はじめにより抜粋)
現在、70歳を超えている平野さんがどんな方なのか、動画を見てみて。ハリのある声に若々しい姿、どんな人生だったのか、本書をじっくり読んでみたい。
ニューヨークスタイルのパイとスイーツのパイオニア的存在として多数のスイーツ著書のある平野さん。離婚後に、アメリカでお菓子作りを学び、帰国後開店したのは51歳の時だった。
アメリカに発つ前の平野さんは、真っ暗な穴に落ちたような強烈な孤独感にさいなまれたという。そのときに、「この孤独から逃げてはいけない。目をそらさずに向き合わないと前に進めない」と強く感じ、徹底的に自分と向き合った。
「これからどのように生きていきたいのか、どんなときに喜びや悲しみを感じるのか、どんなことを大切に思っているのか。
誰かほかの人の考え方をなぞるのではなく、埋もれている自分の軸の部分を掘り起こすような、自問自答の作業です。今までにやったことがないので、もがきながら必死に考えたものです」
そうして、ようやく自分が見えてきたのだという。すると、「孤独が自分と向き合うチャンスをくれた糧」だと思えた。その経験が人生の一大転換、「幸せとの縁結びはここから始まったと思っています」と本書にある。
平野さんは、京都の老舗能装束の家に生まれ、お嬢様として育ったまま結婚して専業主婦になった、苦労知らずの「箱入り時代」を送るが、45歳で終止符を打ち、ひとりで生きることを決心して単身渡米。ニューイングランド地方の伝統的なお菓子と出会い、ケーキディプロマとしてケーキ作りの教室を構える。
50代になり、京都と東京に「松之助」をオープンするなど、女性実業家としてがむしゃらに「おひとりさまキャリア時代」を邁進する。60歳を過ぎ、ニューヨーク出店を試みるも惨敗。ひとまわり以上年下のアメリカ人男性と結婚。
そして70歳を過ぎた今、日本とニューヨークを往復しながら、スキーや釣りなど、新たなチャレンジを夫とともに楽しむ「再婚充実時代」を築いている。
なんともドラマチック!「やってみはったら!」の言葉に支えられて今があるという平野さんは、「無駄はまったくないし、失敗したとも思っていない」「だから、今が一番自然体で、幸せ」という。
平野さんの人生の節目に、何が起きたのか。どんなふうに考えてきたのか。どんな迷いがあったのか。どんな出会いがあったのか。再婚を決意したきっかけは?
ぜひとも、本書で確かめてほしい。
目次は下記の通り。
1章 日々の暮らしに「小さな幸せ」はちゃんとあるから
変化は楽しんだほうがトク
なにげない喜びを拾っていこう
大変でも、好きならかまへん
辛くても孤独とはしっかり向き合う
やりたいことは情熱がある限り続ける
2章 食卓は「健康」と「やすらぎ」を生み出してくれるから
食事の前にはケンカをしない
日に摂りたい健康食材
茶懐石研究家の後藤加寿子さん
4種類のサラダの1品を必ず食べる
レストランの味を台所で再現
3章 私の「好き」は私を「元気」にしてくれるから
ときめきを感じるサングラスを選ぶ
私のお洒落は靴にあり
60年ぶりの挑戦、スキー
釣り、人生初体験!
爽快感が加速する車とドライブ
4章 人生を変えた「出会い」は大切にしていきたいから
非日常に連れ出してくれる映画
師匠で親友、シャロル先生
アメリカのアップルパイを日本に
スタッフはかけがえのない財産
新しいウクライナの家族
5章 二度目の結婚がうまくいく理由
一歩ずつ、進んでいけばいい
違いを認めて受け入れる
年齢はただの数字にすぎない
今度の結婚はまっとうしたい
今日を生きる、が今の心境
本書は、自身の多様な体験をもとに、人生100年時代、次なる扉を開ける勇気とエールを贈る1冊となっている。健康を保つ秘訣でもある食事のレシピや、家庭でも簡単に作れるアップルパイのレシピも収録。これまでの人生は「無駄はまったくないし、失敗したとも思っていない」「だから、今が一番自然体で、幸せ」という著者を支えるのは、本書タイトルにもなった「やってみはったら!」の言葉だ。
素朴で温かみのあるおいしさが人気の「松之助」のスイーツのように、気持ちが温かく前向きになれる大先輩からのエールを受け取ってみない?
今、気持ちが停滞している人、決断できずに悩んでいる人の背中をそっと押してくれる一冊だ。
■平野顕子さんプロフィール
京都の能装束織元「平のや」に生まれる。47歳でアメリカ・コネチカット州立大学に留学。17世紀から伝わるアメリカ・ニューイングランド地方の伝統的なお菓子作りを学ぶ。帰国後、京都・高倉御池に「Café&Pantry 松之助」、東京・代官山に「MATSUNOSUKE N.Y.」と、アップルパイとアメリカンベーキングの専門店をオープン。
また、京都と東京に、お菓子教室「平野顕子ベーキングサロン」も開校。2010年、京都・西陣にパンケーキハウス「カフェ・ラインベック」をオープン。著書に『アメリカンスタイルのアップルパイ・バイブル』(河出書房新社)など多数。
◉ 平野顕子インスタグラム hiranoakiko214
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