日々の運動不足を解消するために、ウォーキングをする人は多い。歩く時間や距離を気にする人はいても「歩幅」に関しては、気にしていない人が多いのではないだろうか。
「歩幅が狭い人は認知症のリスクが高くなる」と指摘するのは、東京都健康長寿医療センター研究所の谷口 優医師だ。
谷口医師らは、複数の地域で1000人以上の高齢者を対象とした調査を数年にわたり調査した。すると、「歩幅の狭い人」は「歩幅の広い人」に比べ「認知機能が低下するリスク」が3倍以上も高いことが判明したという。歩幅の狭さは認知症に強い影響力を持つ遺伝子よりも密接に脳の働きの低下と結びついていることも確認されている。
谷口医師は、「歩く姿に脳の状態が映し出されている」と言う。
歩行速度が遅く歩幅が狭い人では、脳内の詰まり(脳梗塞)が生じていたり、大脳に萎縮がみられるなど、脳内病変の存在が指摘されています。動作の司令塔である脳内で梗塞や萎縮が進むと、脳の動きが低下し、認知症と診断されるケースが多くなります。
つまり、歩く姿になんらかの異変がある人は、脳に異変が起きている可能性があるということだ。
谷口医師の著書、『認知症の始まりは歩幅でわかる ちょこちょこ歩きは危険信号』(主婦の友社)ではこのように、主に「歩幅」の観点から認知症の早期発見と予防の方法を紹介している。
では、どのような歩き方が理想なのか。それは以下のポイントを抑えてさっそうと大股で歩く「ライオン歩き」である。
・視線が水平
・背筋が伸びている
・腕の振りが大きい
・太もも、ひざが上がっている
・かかとから着地
・足指の付け根でけり出している
特に注目したいのは歩幅で、理想は65cm。身長が低かったり、足腰に痛みがあると歩幅が狭くなりやすいが、これらの要因と関係なく歩幅は65cmが理想だという。目安は「横断歩道の白線がまたげるかどうか」。またげなかった人は歩き方を見直してみよう。
歩幅が狭い人の特徴は「ペンギン歩き」と呼んでいる。
・とぼとぼと小股で歩いている
・足裏全体でペタペタと着地している
・手の振りが小さい
・姿勢が前傾して、視線が下がっている
・だれかといっしょに歩いていると、相手に遅れることが多い
特に前傾姿勢は、当てはまる人も多いのではないだろうか。気分は歩き方にも影響し、暗い気分になると前傾姿勢になりとぼとぼと小股になりがち。そういう時こそ、歩幅を広げることを意識して歩くと気分が前向きになりそうだ。
それでは、歩幅をアップさせるにはどうしたらいいのか。コツは「腕を後ろに振る」ことだと谷口医師は言う。腕を前に振ると身体が前傾し、猫背になりやすい。逆に、後ろに振ると、背筋が伸びて視線が上がるので、基本の歩き方を維持しやすくなる。また、腕の動きに合わせて腰が回転するため、歩幅が広がる効果も。
腕の振り方や視線など意識することが多すぎて、自然に歩くことが難しい人は「ワン・ツー・大股歩き」をすると歩幅の感覚が掴みやすくなる。
「ワン・ツー」はその場で足踏みをし、「スリー」のタイミングでいつもより大股で一歩踏み出します。
このとき、新聞紙を敷くと横断歩道の白線の代わりになるという。
本書には、歩き方の他にも歩幅をアップするための「ちょこっと筋トレ+体操」や認知症を予防する食生活などについても書かれていて、とても参考になる。
歩き方を意識することは認知症だけでなく身体全体の健康維持にも役立つ。歩くときは、背筋を伸ばし、歩幅を大きく、後ろに腕を振ることを意識しよう。
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