「がんばれない毎日も、幸せになれない考え方も、全部心の中に棲む悪玉菌のせい」――。
Twitterで話題のイラストレーター・描き子さん初の著書『推しにも石油王にも出会えない私たちの幸福論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、「嫌い」だらけの毎日を「好き」で埋め尽くす方法が詰まった「人生攻略マニュアル本」。
著者は、「心」の動きを「腸」の動きに見立てた「心のフローラ論」を提案している。悪玉菌を減らして善玉菌を育てる→自己肯定感が上がる→人生は好転していく。本書は、このちょっと変わった幸福論をイラスト&エッセイで紹介した1冊。
「残念ながら私たち アラブの石油王に道端で出会うことも 尊い推しとうっかり恋愛関係に発展することも まずないわけで 一発逆転なんか期待できない 自分で自分を幸せにするしかない私たちが それでも幸せになるための本です」
数年前、著者は「苦しみのどん底」にいたという。「舐めた態度でぬるま湯に浸かっていた私に、いきなり天から冷や水がぶっかけられた」のだとか。その「冷や水」とは、夫がうつ病で辞職したことだった。
それまでしがみついてきた「それなりの人生」が、一気に暗転。「今の不幸から抜け出したい。幸せになりたい」という一心で、本を読みあさり幸福について勉強しまくり「幸せオタク」に。
幸せになるための最大のポイントは、「心の仕組み」を正確に知ること。「心の仕組み」がわかれば、心の正しい取り扱い方法がわかる。正しく心を取り扱うことができれば、幸福は向こうからやってくる、としている。
「思い通りにならず、私たちを惑わしてばかりの『心』。私なりにいろいろと研究した結果、心って、ある臓器と動き方がすごく似ていることに気がつきました。その臓器は、『腸』です」
そうして生まれたのが「心のフローラ論」。
心にはネガティブな部分とポジティブな部分があり、腸の悪玉菌と善玉菌のように、心に棲みついて心の健康を左右している、とする考え方。著者は心に棲むネガティブな部分を「心の悪玉菌」、ポジティブな部分を「心の善玉菌」と呼ぶ。
本書は、「1章 私的幸福論」「2章 心の悪玉菌」「3章 心の善玉菌」「4章 心のフローラ論からわかること」「5章 やってみたらわかったこと」「6章 許せないことを許す」「7章 もっとゆるく考えて生きていく」の構成。
ネガティブをやめようと思うなら心のネガティブな部分(悪玉菌)に餌を与えない、ポジティブになろうと思うなら心のポジティブな部分(善玉菌)に餌を与えることだという。
ここでは、悪玉菌の減らし方を見ていこう。
■悪玉菌の餌
「怒り、悲しみ、憎しみ、恨み、つらみ、嫉み」などのネガティブ感情。
■悪玉菌の減らし方
「無駄なネガティブ感情」を与える「SNS」「テレビや新聞、雑誌などのマスメディア」「他人との噂話」「会話の中の不平不満」を排除する。
悪玉菌には「嫌な情報を集める」「暗くなることに注目する」「不幸になる行動をわざと起こす」性質があり、いつも私たちがネガティブ感情に支配されるための情報を探し回っているという。
たとえば、芸能人や政治家のゴシップやスキャンダル、他人のきらびやかなSNS投稿に接した場合。ネガティブ感情がむくむく湧いてきて、悪玉菌はそれを喜んでもぐもぐ食べる。悪玉菌が太れば太るほど、自分も他人も痛めつけて不幸な方へ不幸な方へ......と突っ走ることに。
「見るもの、触れるもの、聞くもの。そして発信するものを、厳選することが大切です」
「あなたの中の悪玉菌は、どうでしょうか? 大きくなりすぎていないでしょうか?」――。
言われてみれば、メディアが報じるスキャンダラスな話題についつい目が行くのは、心の悪玉菌が肥大化している証かも......と思い当たった。
「心の細菌バランスを変える」とは、なんとも斬新な「私的幸福論」。独特なタッチのイラストも、キャラクター化された悪玉菌のセリフも面白い。専門家ではない「幸せマニア」が1から積み上げた幸福論に、親しみを覚えた。
「あなたにとって役に立つものだけを、気まぐれに、もっていってくれたらいいなと思うのです」
帯には、精神科医・水島広子さんが「自己肯定感が大流行の時代。コツコツ取り組める多くの知恵が詰まっています」と推薦文を寄せている。
■描き子さんプロフィール
1987年生まれのイラストレーター、デザイナー、ライター。「cocoloniPROLO」「cakes」で連載中。広告のディレクター、ライター、グラフィックデザイナー、イラストレーターとして「人の心を動かして物を買ってもらう」経験をしたことから、どうせ心を動かすなら「もっと人の利益になるような動かし方をしたい」と思い、漫画と文章を書き始める。親との関係、周囲からの孤立感、夫や子どもとの関係に悩んだ経験を生かして、生きづらさを解消するべく情報発信している。
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