「諦めることで、見える景色がある!」――。
「がんばればなんとかなること」もあれば「がんばってもしょうがないこと」もあるわけだが、現実には「生物学的にしょうがないこと」がたくさんあるという。
進化心理学者、明治大学情報コミュニケーション学部教授の石川幹人(いしかわ まさと)さんの著書『生物学的に、しょうがない!』(サンマーク出版)は、生物学から見て、人類が努力しても「なんともならないこと」51個を紹介したもの。
「幸福な人生を送るために、まずやるべきこと。それは、ひとりの人間として、どれをがんばるべきで、どれを諦めるべきかを見極めることだと、私は考えます」
次の文章を読んで、あなたはどんな気持ちになるだろうか。
「ある雨の日、あなたは友人に誘われて初対面の人ばかりがいる会合に出かけることになりました。その会合では、ひとりにつき3分、出席者の前で自分のことを話す時間が設けられています」
「嫌だな」と感じる人もいるだろう。なぜなら「雨の日」「初対面の人」「人前で話す」というのは、多くの人が苦手とする、できれば避けたいと感じることなのだそう。これは個人の問題ではなく「遺伝子に刻まれたプログラムが原因」。つまり「生物学的に、しょうがない!」という。
本書は「第1章 人間だから、しょうがない!」「第2章 ダラダラしたいの、しょうがない!」「第3章 気にしちゃうの、しょうがない!」「第4章 欲望がわくのは、しょうがない!」「第5章 自分をよく見せたくなっちゃうの、しょうがない!」「第6章 生きるのつらいの、しょうがない!」の構成。
■生物学的に人間が抗えないことの例
なんでも先延ばし、やりたくない/思い通りにならないと怒りっぽくなる/食べ物があるとつい手が伸びる/会社に行きたくない/見た目のいい人を目で追ってしまう/いつまでも未練が残ってる/ちやほやされたい/浮気されてないか不安/マウンティングがやめられない ほか
51個の「○○しちゃうの、しょうがない!」を紹介しながら、あなたは「無罪」だと「科学的に甘えさせてくれる」。努力ではなんともならない悩みなら、いっそのこと「ポジティブに諦める」。そして「限りある努力を、あなたが真に必要とするところへと向ける」のが賢明のようだ。
サンマーク出版公式サイトでは、本書の「はじめに」と「第1章」の試し読みができる。ここでは具体例を2つ紹介しよう。
「人前で話すの苦手なの、しょうがない!」
生物学上の原因は「オオカミなどの『捕食者がいるかもしれない』と感じてしまうから」。たとえば、大学の教室で質問したら、見知らぬ学生たちの視線をいっせいに浴びることになる。言わば「潜んでいるオオカミたちに自分だけがにらまれた感じ」。
こうした警戒心はなかなかぬぐえるものではなく、私たちは「警戒心が強いがゆえに生き残ってきた個体の子孫」ということでもあるという。
「イライラしちゃうの、しょうがない!」
動物は思い通りにならないとき、力任せになんとかしようとする。しかし、人間は「動物のように物事を暴力で解決するのはやめよう」と決め、うっぷん晴らしはできなくなった。
「暴力なしよ」という現代社会のルールを実践する私たちは、身体の態勢が暴力向きになっても抑制する。これがイライラの原因という。ちなみに、イライラを止めるには活発化した脳を沈静化する「ため息」が効果大なのだそう。
「諦めるために使ってもよし! 逆に、あなたにとってその項目が難なくできることなら、それは間違いなくあなたの武器であり、個性になりえます。『がんばってもしょうがないこと』と『がんばればどうにかなること』の分岐点で迷わないよう、本書はあなたの人生の地図となるはずです!」
〇〇しちゃうの、生物学的にしょうがなかったんだと思うと、ずいぶん気持ちが軽くなる。悩みの解決法の1つとして覚えておきたい。
■石川幹人さんプロフィール
1959年東京都生まれ。進化心理学者、明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科(生物物理学)卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知科学、遺伝子情報処理。生物進化論の心理学や社会学への応用、人工知能(AI)および心の科学の基礎論研究、科学コミュニケーションおよび科学リテラシー教育、超心理学を例にした疑似科学研究など、生物学、脳科学、心理学の領域を長年研究している。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、「サイエンスZERO」(NHK)、「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)など、数多くのテレビやラジオに出演。『職場のざんねんな人図鑑』(技術評論社)、『その悩み「9割が勘違い」』(株式会社KADOKAWA)、『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書)など、著書多数。
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