本を知る。本で知る。

「妻が認知症」「子どもができない」不安・悩みに「アガワが軽~く」答えます

アガワ流生きるピント

 「上司の言葉に傷ついた」「彼氏とセックスレスに」「子どもができない」「妻が認知症に」「なりたいものが見つからない」......。人に言えるものから言えないものまで「悩み」は尽きないもの。

 阿川佐和子さんの著書『アガワ流生きるピント』(文藝春秋)は、「仕事」「恋愛」「家族」「生活」にまつわる37の不安・悩みに「アガワが軽~く」答える1冊。

 「つらいことと言えば父のワンマンぐらいだった」という阿川さん。「はてどれほどの慰めの方法を伝授できたであろうか。はなはだ心許ない」としたうえで......

 「一見、無責任にも感じられるアドバイスを耳にして、『失礼な!』と怒るか、『なるほどね』と頷くか、はたまた『それは違うだろう』と呆れるか。いずれにしても(中略)気づかなかった視点に目を向けるチャンスになるのではないだろうか」

下心も恋愛感情も湧かないボーイフレンド

 本書は「第1章 仕事編」「第2章 恋愛編」「第3章 家族編」「第4章 生活編」の構成。悩み→アドバイス→結論の順に進む。アドバイスのパートは、担当編集者・向坊健(むかいぼう けん)さんが、阿川さんに合いの手を入れる形式をとっている。

 阿川さんは向坊さんについて「有能だが、著者をおだてる能力にはやや欠ける」と紹介している。20年以上の長きにわたり、家族ともども親密に付き合ううち、「互いにズケズケとモノを言えるほどの仲に成り果てた」そう。

 作家と編集者の関係にもいろいろあるようだ。2人の軽妙なかけあいにグイグイ引き込まれる。タイトルからして面白そうな予感はあったが、読みながら笑い声を漏らすという、個人的にはあまりない体験をした。

 阿川さんにとって向坊さんは「下心も恋愛感情もまったく湧くことのない、ボーイフレンドの一人」。そして「『人が真面目に話しているのに、どうして茶化すのよ!』と言いたくなるような友だち」。こういう友だちを持っておくのも、心のモヤモヤを取り去るには大事なのだという。

 「というわけで、少々ピントがずれているかとも思われますが、私のアドバイスが、読者の皆様のささやかなヒントになれば、こんな嬉しいことはございません。あとはよしなに......」

必ずや「新しい窓」が開かれる

 さて、37の不安・悩みにはどんなものがあるのか。

 たとえば、「会社の先輩の髪の毛が、格段に増えています」「やたらとモテて困っています。私に隙があるのでしょうか」「妻のカバンに使いかけのコンドームが入っていました」「SNSで友だちのグループから外されていて、疎外感があります」といった具合に、さまざまなタイプの悩みが出てくる。

 ここで「結婚して15年ですが、子どもができません」を紹介しよう。相談者は40歳、女性。夫は「いまのままでもいいじゃない」と言うが、相談者は「もう残り時間が少ない」と焦っている。

 これについて阿川さんは、「最終的に子どもが授からないと決まったとしても、自分は不幸だと思わないでほしい」「将来必ずや『新しい窓』が開かれると思います」と答えている。

 「私は、『神様が一つの扉を閉じたら、必ず新しい窓を開けてくださる』という言葉を大切にしています。(中略)思い通りにいかないとき、私はいつも、この言葉を思い出すの」

 阿川さんは、自身の半生をこうふり返る。専業主婦になりたい→テレビのレポーター→報道番組のアシスタント→米国遊学→「週刊文春」の対談のホスト→レギュラー番組出演→結婚......。1つ閉じては1つ開く。この繰り返しだったという。

だから、今。今を楽しむ

 もう1つ、「定年退職した矢先、妻が認知症になりました」から。相談者は65歳、男性。定年退職し、「これから妻と旅行などを楽しもう」と思っていた矢先のことで、途方に暮れている。

 これについては、阿川さん自身が認知症の母を介護した経験をふまえて、大事なのは「今現在」と答えている。症状が進み、数分前のことも忘れてしまったとしても、「数分前のことはもうどうでもいい」と思うようにすることだという。

 「大事なのは、今、目の前でケラケラ笑っている母なんだから。ああ、幸せなのかな、楽しんでるのかなって思えば、数分前のことはどうでもよくなる。だから、今。今を楽しむ」

 「これ、自分のことだ!」と思う悩みもあれば、「現実にこんなことが!?」と驚く悩みもあるだろう。明るく、カラッと、そこをくぐり抜けるヒントが満載だ。「アガワ流」アドバイスを読めば、鬱々とした気分も吹き飛ぶに違いない。

 「行き詰まったら一人で悶々とせず、無駄かと思っても、他人の言葉に耳を傾ける。その言葉そのものがたとえ役に立たなかったとしても、きっと呆れ笑いながら、しだいに自分で考える力が湧いてくるのである」

book_20210713182205.jpg

■阿川佐和子さんプロフィール

 1953年東京都生まれ。エッセイスト、作家。慶應義塾大学文学部西洋史学科卒。『ああ言えばこう食う』(共著)で講談社エッセイ賞、『ウメ子』で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』で島清恋愛文学賞を受賞。『聞く力』が2012年年間ベストセラー総合1位。ほかに『強父論』『叱られる力』『看る力』(共著)『オンナの奥義』(共著)『老人初心者の覚悟』『アガワ家の危ない食卓』『バイバイバブリー』『ばあさんは15歳』など、著書多数。テレビでは『ビートたけしのTVタックル』に出演中。


※画像提供:文藝春秋



 


  • 書名 アガワ流生きるピント
  • 監修・編集・著者名阿川 佐和子 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2021年7月10日
  • 定価1,760円(税込)
  • 判型・ページ数四六判変型・328ページ
  • ISBN9784163913483

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

エッセイの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?