「認知症になると何もわからなくなってしまう」と考える人は多い。何度も同じことを言う、家族の顔がわからなくなる、突然怒り出す......。介護をする人はイライラしたり、心配したりして、疲弊してしまうことも。
本書、『マンガでわかる 認知症の人が見ている世界 新版』(文響社)は、認知症の人の不可解な行動の裏にある心理を解説していく。
著者は、認知症ケアの現場で数多くの認知症の人と接してきた理学療法士の川畑智さんと、聖路加国際大学病院臨床教授の遠藤英俊さん。「認知症になると何もわからなくなってしまう」というのは誤りで、適切なサポートがあれば症状が進んでも自立した生活を送ることができるという。
プロローグに掲載されている「ここはひざ!」のエピソードが分かりやすい。
川畑さんは、駆け出しのころに一人の認知症患者・鈴木さんの認知機能テストを担当する。認知機能テストとは、認知症の有無や進行度を調べるテストのことだ。
「(鈴木さんは)どうせ何もわからないんだろうな」と考える川畑さん。
「私たちが今いるところはどこですか?」の質問にうまく答えられない鈴木さんを前に、川畑さんは次第にイラ立ち、膝をバンバン叩きながら「ここはどこですか!?」と声を荒げてしまう。
すると、鈴木さんは「ひざ!!」と答えた。鈴木さんの認識は少しズレているものの、問われた言葉については理解していたのだ。
つまり、認知症だからといって、何もわからなくなるわけではない、と川畑さんは説く。認知症の人がいる世界と認知症ではない私たちの世界にズレが生じると考える方が正しい理解ができそうだ。
本書では、この例をはじめとして、認知症の人の心の中がどうなっているのか、認知症の人にはどのような世界が見えているのかを、浅田アーサーさんのマンガを交えて解説していく。
川畑さんは、認知症が誰にとっても身近なものになっていく今、認知症に対する正しい知識を身につけることが大切だと言う。
「認知症になったら人生が終わり」という考えは、今や過去のものにすべきなのです。
認知症患者の不可解な行動に悩む人は多い。しかし、その言動には本人なりの理由が隠れている。それがわかれば、当事者と接するのが少しラクになるかもしれない。
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