男装、半人半獣、差別問題――。『薬屋のひとりごと』など、中華風の世界観を取り入れたコミック作品は数多くある。だが、藤間麗さんの『王の獣』(小学館)のように、それに加えて様々な要素を取り入れた作品はあまりない。
主人公は、半人半獣――"亜人"の少女・藍月(らんげつ)。皇宮で殺された双子の弟の敵を討つため、男装をして男と偽り、敵といわれている第四皇子・天耀(てんよう)に従獣(じゅうじゅう)として仕える。「――やっとこの男を殺せる!」
しかし、天耀は弟殺しの犯人ではなかったことが発覚。天耀やその部下・太博(たいはく)らとともに、真犯人を探すことになる。そうして行動を共にするなかで、天耀への恋心を募らせていく。
男装というと『ベルサイユのばら』などを思い浮かべる人もいるかもしれない。
しかし本作は、そういった宝塚の男役のような「男装の麗人」の物語ではなく、1人の年相応の少女の恋物語だ。「これは尊敬? ...不敬じゃない? "まるで"――」。初めての感情に戸惑いながら愛し愛される喜びに気づいていく藍月の姿は、むしろ王道の少女マンガの主人公を思い起こさせる。
作中世界では、藍月をはじめとする亜人は被差別階級にある。皇宮で生活するなかで、藍月もたびたび差別に直面する。「所詮、亜人は亜人なのだから」「亜人たちはここまで」と言われ、周囲から蔑まれる。
理不尽な扱いを受け、「こんなクソみたいな世の中」と藍月が慟哭するたび、胸を締め付けられる。
最新6巻では、第三皇子・江凱(こうがい)に媚薬を嗅がされ、女であることが露見する。「自覚したほうがいいぜ。...愛でられるのが似合う女だって」。秘密がバレてしまった藍月は――。
ファンタジーや恋愛など、様々な要素が詰め込まれている本作。幅広い読者に刺さるイチオシの作品だ。
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