想像してみてほしい。あなたがふらっと立ち寄った平日の公園に、数組の親子連れがいる。その中に、無邪気に走り回る子どもと、それを見守る親がいる。
この場合、あなたがイメージした「親」とは、父親だろうか、それとも母親だろうか。両親だとしたら、男女のカップルか、それとも、同性カップルだろうか......。
2021年2月26日に発売予定の『ふつうの家族にさようなら』(KADOKAWA)は、様々な家族の在り方が肯定されつつある現代、「そもそも家族ってなんだろう?」という正解のない問いに、正面から向き合うエッセイだ。著者は家族法研究者の山口真由さん。30代で「卵巣年齢50歳」と医師に告げられたという衝撃的なエピソードから始まる。
山口さんは、東京大学を「法学部における成績優秀者」として総長賞を受けて卒業した後、財務省に入省。2008年に退官し、2015年まで弁護士として企業法務を担当していた。その後、ハーバード・ロー・スクールに留学。帰国後は東大大学院で日米の「家族法」を研究し、博士号を取得。現在は、信州大学特任准教授・ニューヨーク州弁護士として従事している。
本書の目次は下記の通り。
はじめに
第1章 親子
言葉を失った「卵巣年齢50歳」の衝撃
結婚じゃない! 子どもなんだ!!
精子バンクはオンラインデート
精子のお値段
なんでもかんでもお金で買えちゃうアメリカ文化
個人情報追加で精子はもっと高く売れる
アメリカのカジュアルなフェミニズム
リベラル・フェミニズムの考え方
「フェミニストの希望の星」が残した宣言
テクノロジーが作り出す子どもたち
行きつく先はディストピア?
「ふつうの家族」にさようなら
第2章 結婚
親友の結婚話でヒートアップした私
同性の性行為は「神に背く」行為とされた
同性婚を認めた感動的な判決
同性婚を願う原告たちの物語
同性婚に反対した判事たち
ジャネット・ハリーというロック・スター
ハリー教授の「オフィス・アワー」
ブラック・フェミニズムについての考察
聖なる結婚、特別なステイタス
権利と義務の束としての結婚
人生という名のジ・ハード
第3章 家族
謎だった「男のお母さん」
私が育った日本の家族
多様になりつつある日本の家族
コンスタンティンの家族
マデリンの家族
葛藤するケヴィンの家族
「男のお母さん」「女のお父さん」問題、再び
「家があります。緑と白の家です」
第4章 老後
アメリカの「家族」と日本の「家」の違い
アメリカの家族にあるはっきりとした外縁
日本の「家」は会社だった?
「ラウンドテーブル」法廷の泥沼
現代社会における「家」の残り香
「家」か? それとも「個人」か?
JR東海事件が投げかけるもの
元農水事務次官の事件が問いかけるもの
いまだに過渡期の私たちは......
第5章 国境
アメリカの「実子」、日本の「養子」
「結婚」なんて点いたり、消えたり
「親子」ですらも、点いたり、消えたり
ステイタスとしての家族、プロセスとしての家族
おわりに
時代の変化とともに、家族の在り方も変化するのは必然だ。ふつうという価値観を押し付けられたくはないが、新しく生まれたマジョリティ側にまわり、古臭い考え方だと否定したいわけでも、多様性を押しつけたいわけでもない。これからの時代、大切なのは、違いを批判することではなく、同じであることを肯定することではないか。普遍の中にある真ん中を見つけていこう、と山口さんは呼びかける。
家族とは何か、親子とは何かを軸に、広く社会問題を考えるきっかけをくれる一冊。
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