NHK広報局...約2,064,000
SHARP シャープ株式会社...約449,200
セガ公式アカウント...約311,400
(いずれも2月22日現在)
これらの数字、何を示しているのか分かるだろうか。
答えはツイッターのフォロワー数である。NHK広報局のアカウントはなんと200万人を超えるフォロワーがいる。200万といえば、日本国民の60人に1人となる数字である。もちろん一人で複数のアカウントを運用するケースも多く単純に「日本国民の60人に1人が」とは言えないが、とはいえ膨大な数だ。
しかし、こうしてSNSを活用したブランディングや情報提供に成功している企業は一握りである。多くの企業は「フォロワー数が増えない」「何を発信していいのか分からない」「炎上が怖い」などの様々な壁を乗り越えられないでいる。
ここで紹介する本はSNSの入門書である。
林雅之氏による『デジタル時代の基礎知識『SNSマーケティング』 「つながり」と「共感」で利益を生み出す新しいルール(MarkeZine BOOKS)』(翔泳社刊)は、そうした悩める企業の経営者や広報担当者のためのハンドブックだ。
企業がSNS戦略に失敗してしまう理由の一つは、SNSの力をまだあまり信用できていない部分があるからだろう。
データを見てみるとよく分かるが、社会はこれからよりSNSへの移行が強まっていくことになる。
総務省情報通信政策研究所「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、平成28年の平日の「ネット利用項目別平均利用時間」は全世代的にメールがトップ。仕事の時間を含めるのだから、当然といえば当然だろう。
しかし、年代別にみるとメールは30代以上の文化であり、10代、20代は「ソーシャルメディアを見る・書く」が圧倒的にトップになる(10代は平均58.9分、20代は平均60.8分をソーシャルメディアに費やしている)。
近年ではメールを使わずにSNSで仕事の連絡をする人も増えている。そこにいけば自分にとって必要な情報がある場所になっているのである。
また、休日のデータになると、「ソーシャルメディアの利用」は30代でもトップになる。SNSの利用時間は30代までのどの世代においても、ブログ・ウェブサイトの閲覧執筆や、動画、ソーシャルゲームの時間よりも長い。
これからの消費を担う世代は、SNSの虜となっているのだ。
また、インターネットで当たり前とされていた「検索」という行動すらも変わりつつある。インスタグラムでは「#〇〇〇」というハッシュタグと呼ばれるものが鍵を握る。試しに「#ラーメン」というハッシュタグをクリックすると、美味しそうなラーメンの画像が大量に出てくるだろう。
サイバー・バズ社の調査によれば、20代の女性の約6割がハッシュタグによる検索をきっかけに商品を購入したことがあるという。
こうした時代においては、企業側がSNSを通じて自社イメージやブランドをデザインする必要があり、率先して打ち出す必要が出てくる。SNSを使わずともビジネスが成立する企業はかなり限られる。そんな時代になりつつあるのだ。
と、ここまでの説明に対して多くの広報担当は「それは分かっているけれど、上手くいかない」と思っているだろう。それは本書を読み込んでほしいところなのだが、簡潔にSNSのアカウント運用に必要な要素をあげていこう。
・SNSを運用する目的は何?(KPI、KGIの設定)
・ターゲットは誰?(SNSごとにアクティブなユーザーは異なる)
・何の媒体を使う?(テキスト?写真?動画?)
・ペルソナは? 運用マニュアルは?
・画像はどんなものを使う? どんな投稿をする?
・誰か自分たちの投稿を拡散してくれる有名人は?
SNSの運用はまさに「自社メディアを運営すること」だ。反響をしっかり見定めて、効果測定をする。常にPDCAを回し続ける必要がある。
効果測定については大げさに考える必要はなく、数字を分析できる機能が用意されているSNSもあるので使い方を覚えれば良い。パソコンが苦手で...という人は一から勉強していくことが大事なので、根気強くやっていこう。
最後に、SNS運用で最も怖いリスクの一つである「炎上」について触れよう。本書では予防対策として以下のようなことがまとめられている。
(1)組織で対策すべきこと
ダブルチェックの体制を検討する
(2)SNS運用担当者が気をつけるべきこと
時勢に敏感になる
触れないほうがよい話題を心得る
(3)全社員に周知すべきこと
自社の社員しか知らない情報はSNSでも触れない
著者は、体制を確立することで炎上が起きてもすぐに鎮静化することができると述べる。
今後、広報や広告のフィールドはますますSNSに寄ってくるだろう。その中で自社のブランドをいかに伝えていくか、ファンを獲得していくか。誰かに任せるのではなく、社をあげて考えていくことが大切だ。
(新刊JP編集部)
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