「あの人は歩き方が美しい」。
そう聞いて、あなたはどんな歩き方をイメージするだろうか。
背筋をピンと伸ばし、胸を張って、大股でシャキシャキと歩く姿を想像する人がほとんどかもしれない。
たしかに、そのような歩き方をすれば、見た目は美しい。だが、『腰・ひざ 痛みとり「体芯力」体操』(青春出版社刊)の著者、鈴木亮司さんによると、こうした歩き方は、身体への負担を考えると実は好ましくないのだという。
そこで今回は、歩き方と健康との関係性を中心に、鈴木さんにお話をうかがった。
■身体への負担具合では、どんな歩き方が理想的?
――インタビュー前編では、大腰筋と腰痛・ひざ痛とのつながりについてお話いただきましたが、後編では大腰筋について、さらに詳しくうかがわせてください。本書で「日本人は西洋人に比べて大腰筋が細い」と書かれていましたが、大腰筋の「太い・細い」が、腰痛・ひざ痛の発症率にも影響を与えるものなのでしょうか。
鈴木:与えますね。黒人は日本人や白人よりも腰痛の発症率が低いと言われています。裏を返せば、日本人は身体のつくりからして、腰痛・ひざ痛になりやすい。
でも悲観することはありません。日本人は古くから、無意識のうちに大腰筋を鍛えるトレーニングをしていたんですよ。
――それは、具体的にどのようなものなのでしょう?
鈴木:たとえば、「すり足」などはまさにその典型例です。これは、普通の歩き方よりも大腰筋を使うことになるため、体芯力の向上に役立ちます。
すり足は、ほとんど足を上げずに腰から前へ出る歩き方です。草履や下駄を履いて生活することが当たり前だった時代には、多くの日本人が自然に行なっていた歩き方ということになります。
――本書では、この「すり足」にヒントを得た体芯力体操も紹介されています。これは、予防的な使い方だけでなく、すでに腰痛・ひざ痛を抱えている人も行なって問題ないものでしょうか。
鈴木:まったく問題ありません。というのも、そもそも腰痛・ひざ痛を持っている人の歩き方というのは、放っておいてもすり足気味になるものなんです。
それは、足を上げずに歩くのが一番痛くないから。つまり、すり足は、腰やひざにとって最も負担の少ない歩き方ともいえるのです。
――この体操を行なう際の「ペース」については、どのようなイメージを持っておけばよいでしょう?
鈴木:急いだり、大股にする必要はありません。むしろ、ゆっくり、そっと歩くのが望ましいですね。
一般的に、胸を張って大股で歩くのがいいと考えられていますが、実はこうした歩き方は腰やひざにかなりの負荷がかかるので、健康な方にもおすすめできません。「大股でしゃきしゃき歩くのは良いこと」という思い込みは捨てたほうがいいでしょう。
――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。
鈴木:この本でお伝えしたいのは「我慢すること、辛い運動に耐えることが全てではない」ということです。というのも、多くの人が「頑張らないと成果は出ない」、「努力というものの先に健康がある」といったような思い込みにとらわれているように感じるためです。
でも体芯力体操を実践し、身体の変化を感じることができれば、そうではないことが分かっていただけるはずです。体芯を思い通りに使えるようになることで自分の身体に可能性を感じることができる。そのことによって、人生に希望を持っていただきたいですね。
(新刊JP編集部)
『腰・ひざ 痛みとり「体芯力」体操』の著者、鈴木亮司さん