「企業不祥事はなぜ起きるのか」稲葉陽二著

 　近年、監査役の権限強化などコーポレート・ガバナンスが強化されている。だが、品質偽装や粉飾決算など、不祥事は毎日のように報じられている。
　このような不祥事の謝罪会見で耳にするのが、「法令を軽視する企業風土」「上司に異を唱えることができない社内風土」など、「企業風土」という言葉である。不祥事の原因には制度の問題だけでなく、もっと根深い闇があることがうかがえる。この企業不祥事を、社内外の人間関係や規範・信頼関係（社会関係資本）から解き明かしたのが本書である。
　内輪の小集団ですべてを決定するインナー・サークルの存在、事業部ごとに壁をつくるサイロ化、トップによる暴走、会長や相談役が隠然たる実権を持つ院政など、さまざまなケースが明らかにされる。そして、不祥事にはトップに問題があることが示唆される。「企業風土」はトップがつくるのである。