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「悲素(ひそ)」帚木蓬生著

  もう17年も前の事件なのか―、とそのことにまず驚いた。数々の文学賞を受賞している作家であり、現役の医師でもある著者が本作で焦点を当てているのは、あの「和歌山カレー事件」である。
 実在の人物、井上尚英氏をモデルにしたとおぼしき主人公は、過去にオウムの「サリン事件」をはじめ、日本犯罪史上に残るいくつかの毒物事件の鑑定を依頼されたことのある「中毒学」が専門の医師だ。
 夏祭りで出されたカレーライスが原因で起こった大規模な「食中毒」を新聞記事で知った主人公は、やがて和歌山県警に懇願され、事件に関わっていく。
 論理的な推理と医学的な知識が、容疑者とされる女性を徐々に追いつめていく様子は息もできないほどの緊張感だ。
 この著者にしか描くことができないだろうと読みながら圧倒される。この夏いちばんの収穫作。

書名:悲素(ひそ)
著者:帚木蓬生
発行:新潮社
定価:2000円+税

夕刊フジ

産業経済新聞社発行が発行する、首都圏・近畿圏を中心に販売されているタブロイド判夕刊紙。ターゲットは30代~60代を中心とした都市型男性ビジネスマン。 WEB版は「ZAKZAK」(http://www.zakzak.co.jp/)で、紙面と同じ記事だけでなく、WEBオリジナルの記事も人気。 書評は毎日掲載しており、紙面ではこのコラムで掲載されたもの以外も読むことができる。

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