読むべき本、見逃していない?

パラリンピックとオリンピックの両方に出場した金メダリストがいた

  • 書名 WHO I AM
  • サブタイトルパラリンピアンたちの肖像
  • 監修・編集・著者名大泉実成、黒川祥子、八木由希乃、吉田直人 著、木村元彦 編著
  • 出版社名集英社
  • 出版年月日2019年8月26日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・228ページ
  • ISBN9784087890129

 東京五輪が近づいてきた。パラリンピックへの関心も盛り上がりつつある。テレビではすでにWOWOWがパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ『WHO I AM』を長期企画で放送中だ。本書『WHO I AM――パラリンピアンたちの肖像』(集英社)は、そこに登場した選手に改めて迫るノンンフィクションだ。

四肢を失ったフェンシング選手

 この番組はWOWOW とIPC(国際パラリンピック委員会)が共同で立ち上げたもの。リオ大会が開催された2016年から、東京大会まで5年にわたり、世界のトップパラアスリートに迫るという大型シリーズだ。

 一体どうやって番組をつくるか。制作陣も最初は手探りだったようだが、選手たちが発する強烈な個性とエネルギーに圧倒され、自然に方向性が固まったという。

 本書では、内戦で足を失った選手、宗教上の制約で女性が活躍できない国に生まれたアスリート、盲目サッカー選手、四肢を失ったフェンシング選手など多彩な選手たちが登場する。いずれも逆境にもめげず、パラスポーツに挑戦し、不可能を可能にした人たちだ。

 「私が速いのは、私が幸福だから」
 「オレはこのスポーツを通して、ノーマルに生きることができるようになったんだ」
 「私はあの事故を"チャンス"と名づけました」
 「ボールを蹴りたい。試合に出たい。僕は、それで生きているんだから」
 「私は、ただのいい子じゃないのよ」

 それぞれの言葉はシンプルだが、その裏には血のにじむような努力と強い思いがほとばしる。タイトルの「WHO I AM」は「これが自分だ!」という意味だという。

最初はまっすぐ泳げなかった

 まったく知らなかったが、南アフリカのナタリー・デュトワ選手は、元々オリンピックで有望視されていた競泳選手だった。ところが不慮の事故で左足の膝から下を切断。それでもへこたれずトレーニングを再開して障がい者スポーツ大会に出場。やがて健常者の大会にも復帰し2003年のアフリカ選手権では800メートルで優勝。北京五輪ではパラリンピックとオリンピックの両方に出場し、パラリンピックでは自由形、バタフライなどで5つの金メダルを獲得したという。

 本書ではこのナタリー・デュトワ選手を目標として練習に励み、ついにロンドンパラリンピックの100メートル自由形で彼女に勝ったオーストラリアのエリー・コール選手のことが詳しく紹介されている。がんで幼少の時に片足を失った。水泳を始めてから数週間は、円を描くようにしか泳げず、まっすぐ泳ぐのに苦労した。そんな少女が、金メダルをつかむまでの物語だ。義足の堂々とした水着姿が神々しい。

 編著者の木村元彦さんはスポーツを中心とするノンフィクションライター。『オシムの言葉』でミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。在日朝鮮人のサッカーを扱った『無冠、されど至強』(ころから刊)などの著書もある。

 他の4人の筆者のうち、大泉実成さんは『説得 エホバの証人と輸血拒否事件』で講談社ノンフィクション賞受賞。黒川祥子さんは『誕生日を知らない女の子 虐待──その後の子どもたち』で、開高健ノンフィクション賞を受賞している。

 BOOKウォッチでは関連で、『いま、絶望している君たちへ――パラアスリートで起業家。2枚の名刺で働く』(日本経済新聞出版社)、『切断ヴィーナス』(白順社)なども紹介している。

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