「ももクロ」の愛称で知られるガールズユニット、ももいろクローバーZの2018年6月から2019年5月までの活動を記録したのが、本書『ももクロ青春録』(朝日新聞出版)である。
サブタイトルに「公式記者インサイド・レポート」とあるのは、著者の小島和宏さんが、2012年からももいろクローバーZの「公式記者」として密着取材を続けているからだ。これまでに『ももクロ活字録』『ももクロ見聞録』『ももクロ吟遊録』(いずれも朝日新聞出版)などを書いている。
いわば「身内」のような存在なのだが、べったりした感じはない。元々「週刊プロレス」の記者で、その後アイドルに関する執筆活動を始めた。ファンの心情と記者の目線がうまく調和した記述となっている。
結成10周年の2018年はももクロにとって試練の年だった。1月にメンバーの一人が引退し、5人から4人になったのだ。少数精鋭のパフォーマンスでファンを集めてきたユニットだけに変化が注目されたが、なんとか4人のももクロは定着したようだ。
本書は時系列に沿って、それぞれのソロコンサートや4人でのライブの模様を紹介している。
2018年9月、2000人以上を収容する舞浜アンフィシアターで2週間、初のミュージカル公演を行った。劇中に登場するアイドルグループに彼女らの10年間の歴史が投影されていた。
路上ライブでスタートした「週末アイドル」が、10年間まじめにやってきたことに対するひとつの「答え」なのかもしれない、と小島さんは書いている。
ももクロは、あまりメディアに登場せず、ライブを中心に活動している。クオリティーの高いライブのファンは多く、2014年には国立競技場でのライブを女性グループとして初めて行い、高い動員数で知られる。
その一方では、地方の小さな会場を使った「青春」ツアーと題したライブを2017年から続け、2018年12月8日、茨城県常陸大宮市文化センターでの公演で全国47都道府県を制覇した。制作スタッフが「47ピースの難解すぎるパズル」と呼ぶ苦労があったそうだ。通常、ホールの予約は1年前、抽選で決める。地元の人の発表会などと同じ条件で競ったという。
すでに主要都市は回っているので、県庁所在地ははずしたというところにも、地方のファンを大事にするももクロの姿勢が感じられる。
2年前からは地方自治体とタッグを組んだイベント、「ももクロ春の一大事」を行っている。2017年は埼玉県富士見市、18年は滋賀県東近江市、19年は富山県黒部市で開催された。野外の運動公園に2日間で1万5000人が集まった。後日、黒部市から「ももクロの経済効果は6億円」と発表され、話題になったという。
ももクロは聞いたことがあっても、百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、高城れにの4人の名前も知らなかった評者だが、本書を読み、彼女たちがなぜ幅広い層に支持されるアイドルユニットなのかがわかったような気がする。巻末に4人の座談会が収められている。
それぞれがソロコンサートを開ける実力があり、4人になっても誰がセンターということはなく調和しながら、それぞれの個性を発揮する。そこに「モノノフ」と呼ばれる独自のファン層を獲得してきた秘訣があるのだろう。
彼女らのCDの売上は他のアイドルユニットに比べれば、さほど多くはない。しかし、好感度やライブ動員数は抜群だ。日本の音楽業界がCDなどの音源からライブにシフトしてきた状況について、BOOKウォッチでは『ライブカルチャーの教科書』(青弓社)で紹介している。
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