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タイトルと表紙レイアウトに、ドキリ

切断ヴィーナス

 パラリンピックがテレビ放映されるようになり、義足姿も身近になってきた。関連の書籍もいくつか出版されている。そのなかで本書『切断ヴィーナス』(白順社)はやや異色だ。

 タイトルにもあるように、ヴィーナス、すなわち被写体となった女性たちの美しさや女神性を強調しているという点で際立つ。

ハイジャンプなどで活躍

 とにかく写真がきれいだ。ハッセルブラッドで撮っているそうだが、大判図書ということもあり、素人目にも鮮明でインパクトがある。

 本書では被写体=モデルとして11人が登場している。いずれも義足を使っている女性だ。前向きにしっかりと生きている様子が、写真から伝わる。巻末にそれぞれの簡単なプロフィールが掲載されている。

 1992年生まれの高桑早生さんは中学1年のとき、左脚足関節の骨肉種により切断、義足に。2008年から陸上競技を始め12年のパラリンピックなど国際試合にも出場している。1994年生まれの藤井美穂さんは、「双子のうち私だけが命を授けられた」。右足がその影響を受けて生後10日目に切断。しかし、ハイジャンプでは世界記録を更新した。東京パラリンピックの出場も目指す。このほか、がんのため右大腿切断、事故により右太ももを切断など、「切断」の経緯とその後の人生、現況がつづられている。

 それぞれが装着している義足は、義足作りで有名な義肢装具士・白井二美男さんの製作。1955年生まれの白井さんは通常の義足に加え89年からスポーツ義足の製作を始めた。切断者のランニングクラブ「ヘルス・エンジェルス」も創設し、クラブのメンバーから陸上競技や自転車競技など多数のパラリンピックメンバーを輩出している。

 義足は一本3キロ前後の重さがある。体重50キロの人だと片足の重さは9キロ前後になるというから、それに比べると軽い。作業には数か月かかるという。万能の義足はなく、何をしたいのか、本人の希望に合わせながら調整する。数ミリの誤差も許されない。

写真の力を信じる

 撮影したフォトグラファーの越智貴雄さんは1979年生まれ。大阪芸術大学写真学科を卒業後の2004年、パラリンピックのスポーツ情報サイト「カンパラプレス」を立ち上げた。

 12年には義足アスリートの競技資金集めに協力するためのカレンダーを1万部出版。13年9月、ブエノスアイレスで開催された2020東京五輪パラリンピック招致の最終プレゼンテーションでは、佐藤真海選手のスピーチに「跳躍写真」が使われ、注目された。「義足のヴィーナス」を撮影するまでに、義足の人たちとの長い付き合いがある。

 もちろん義足を隠したいという人も多い。「それならば、臆せず隠さずにいる人を撮ろう、誇らかに見せている人を撮影しようと...」(越智さん)。

 そのせいもあるのだろう、本書に登場する11人は実に生き生きしている。本書を見た人がポジティブな行動を起こすきっかけになれば、というのが越智さんの願いだが、見事に成功していると言えるだろう。「写真の力を信じて、これからもこの活動に取り組んでいきます」と書いている。

 本書は発売後に多数のメディアで取り上げられ、ファッションショーまで開かれるなど反響を呼んだ。その一因は、リアルなタイトルと表紙にあるような気がする。「切断」と「ヴィーナス」、残酷さと聖なる崇高さ。相反するイメージをタイトルで大胆に結合させた。そもそも「ヴィーナス」という言葉を思いついたところがすごい。表紙写真では、太もも部分を彩色した義足で、生身以上の強烈なエロチシズムも感じさせる。誰がタイトルを決めて、表紙レイアウトをしたのか知らないが、相当なウデだと思った。

 
  • 書名 切断ヴィーナス
  • 監修・編集・著者名越智貴雄(著)
  • 出版社名白順社
  • 出版年月日2014年5月29日
  • 定価本体2200円+税
  • 判型・ページ数A4判・80ページ
  • ISBN9784834401394

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