羽田空港は4年連続6回目の「清潔さ世界一」を受賞したという。その徹底した清掃の立役者として知られるのが新津春子さんだ。NHKの番組「プロフェッショナル」にも登場したので知っている人も多いだろう。
本書『清潔な暮らしは1枚のタオルからはじまる』(朝日新聞出版)は、そうじにかける心がけと具体的なノウハウを書いた本だ。実用書には違いないが、新津さんのやさしい人柄が伝わってくる読み物としても楽しめる。
新津さんは中国残留日本人孤児の子どもとして、1970年中国・瀋陽で生まれ、17歳のときに家族とともに日本にやってきた。日本のかわいい洋服を買うために、清掃の仕事を始め、上達するのに夢中になったという。仕事が新津さんの居場所になったからだ。
ある日、上司に「心に余裕がなければ、いい清掃はできませんよ」と言われ、「清掃とは相手を思いやる心」と気づき、目に見えないところの汚れやにおいにまで気をつけて、清掃するようになった。においは雑菌が原因だからだ。
羽田空港のターミナルの清掃を32年以上続け、実技指導者であるとともに、2018年にハウスクリーニング事業部門「思う心」を創設、一般家庭の清掃も行っている。本書はプロの目から見た一般家庭の中の汚れや不具合について対処法を示している。
新津さんはにおいに敏感だ。例えば、枕カバーの黒ずみやにおいは、皮脂汚れや汗が原因だ。洗濯機でまわす前に、ぬるい重曹水に30分から2時間、枕カバーをつけておき皮脂汚れを落としてから、通常通り洗濯すればいいそうだ。枕カバーは毎日、シーツは2日に1回洗濯しているというから徹底している。
重曹水は、キッチン回りの油汚れや、浴室の石けんカスや湯垢などの汚れにも効果的だ。におい対策の強い味方になってくれるという。何にでも応用できる魔法のような水だ。
新津さんは「すべての汚れは、ほこりから始まる」といい、寝室のほこり対策が特に大切だと指摘する。
・水洗いできるものは水洗い ・水洗いできないものは天日干し(または陰干し)
枕も丸洗いできるものを勧める。中身に使われることの多いポリエステル綿はほこりをためこみやすい素材。水洗いすることで、天日干しよりもほこりの発生を抑えることができる。
毛布も天日干しするだけでなく、定期的に洗濯機で丸洗いしているという。干し方がポイントだ。
・必ず2日間干す ・物干し竿を2本使って、真ん中に空気が通るようにして干す
夏はエアコンの出番が多い。「エアコンは最大のほこりの発生源」と注意する。「自動お掃除機能」には、「フィルターのほこりを自動で除去するタイプ」と「フィルターに加えて熱交換器も掃除するタイプ」の2つがある。前者の場合、たまったゴミは人手で定期的に捨てなければならない。「自動」だからと妄信しないで、フィルターが汚れていないかこまめにチェックすることを勧める。
掃除のプロの新津さんだが、意外なことに片付けが大の苦手だという。ものを捨てられないタイプだそうだ。そこで行き先が決まらないものは3段のオープンラックを「待合室」として使い、1カ月に一度、整理・分別している。
また「箱ごと収納」も活用している。そのままだと中身がわからないから、写真を撮って箱の横に貼ると便利だという。
家の中がきれいになると、人生は生き生きと輝くというのが新津さんの信念だ。「毎日、何かひとつ」でいいそうだ。
ここには紹介できなかったが、100円ショップの活用法など実践的なノウハウが詰まっている。そうじ好きの人にはたまらない本だろう。
ちなみにタオルは薄い綿のタオルが一番いいそうだ。
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