文章の書き方に関する本をよくチェックしている。本書『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)は、タイトル(「バズる」とは?)と装丁(なぜ下着姿の女子?)が斬新でパッと目に入った。
帯には「話題の京大生ライターが言語化した『モテまくる文章』の科学」の気になるコピー。さらに、著名人の名前と「○○力」とある。直感的に面白そうに感じて手に取ったが、予感は的中した。
著者の三宅香帆さんは、1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。三宅さんのTwitterによると「25歳OL兼文筆業」。著書に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)がある。
「バズる」とは「(主にネットを中心に)爆発的に広まること」「たくさんの人に認知されること」の意味で使われる。ただ、「バズらせる」といっても「テクニックを駆使して、一時的に大きな拡散を狙う」ものではなく、本書の目的は「1 (文章の終わりまで読もうかな)と思ってもらう。」「2 (この人いいな)と思ってもらう。」「3 (広めたいな)と思ってもらう。」ような文章を書けるようになることとしている。
「私はおそらく日本中の誰よりも『読んでて楽しい文章の法則』を研究してきました。......長年かけて、一つひとつがんばって『法則』として言語化してきたんです。それをまとめたのが、この本です」
本書は4つのCHAPTERで構成され、CHAPTERごとに著名人の「○○力」に関する考察が展開されている。その数なんと約50名。「文芸オタク」ぶりがいかんなく発揮されている。
「CHAPTER1 バズるつかみ どうすれば、振り向いてくれる?」
星野源の未熟力(問いを共有する。)
森鴎外の寄添力(最初にしつこく「これは記憶だ」と伝える。) ほか
「CHAPTER2 バズる文体 どうすれば、心を開いてくれる?」
村上春樹の音感力(読みたくなるリズムを使う。)
司馬遼太郎の撮影力(カメラだけで書く。) ほか
「CHAPTER3 バズる組み立て どうすれば、楽しんでもらえる?」
秋元康の裏切力(オチでひっくりかえす。)
上野千鶴子の一貫力(言いたいことのセンターを決める。) ほか
「CHAPTER4 バズる言葉選び どうすれば、思い出してくれる?」
阿川佐和子の声掛け力(突然、読み手に話しかける。)
宮藤官九郎の激化力(盛りまくる。) ほか
人気作家からアイドル、インフルエンサーの文章に至るまで研究してきたという三宅さん。その知識量に驚かされる。それぞれの原文と、三宅さんの考察、ポイントが書かれている本書は、時代もジャンルも越えた文章のシャワーを浴びることができ、刺激的で満足度の高い1冊だ。
文章の「内容」より「外見」(テンポ、構成、つながり)のほうが好きという三宅さん。子どもの頃から「文体ウォッチング」が趣味という。
「個性の失われた文章を発見するたびに、私はひとりで勝手に哀しんでいます。......誰もがみんな、その人らしい言葉を自由に使えばいいじゃないか。そんな個人的思想のもと、この本ができあがりました」
三宅さんの自然体で伸び伸びとした文章と、約50名の著名人の文章に触れているうちに、文章を書くときに無意識にはまり込んでいた型が取り払われた気がした。本書は、文章の書き方のストレッチをするような効き目がある。
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