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茶髪の社会学者が人生100年時代の「希望論」語る

  • 書名 未来を生きるスキル
  • 監修・編集・著者名鈴木謙介 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2019年5月10日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書判・233ページ
  • ISBN9784040822709

 帯に「プログラミング教育必修化時代の戦い方」とある本書『未来を生きるスキル』(角川新書)の著者、鈴木謙介さんは関西学院大学先端社会研究所所長。TBSラジオ「文科系トークラジオLife」のメインパーソナリティも務める茶髪の社会学者というと、思い浮かぶ人もいるだろう。

社会の変化にどう対応

 「社会の変化は感じるが、じゃあどう対応したらいいのか?」。どうしようもない不安や不遇感にさいなまれる人たちへ伝える「希望論」とある。

 

【仕事・働き方】、【お金・自己投資】、【育児・教育】、【地域・コミュニティ】、【家族・愛・絆】の5つのテーマで章立てされている。だから必ずしも学生や社会人だけでなく、主婦や定年後の人が読んでも参考になる。

 まず、【仕事・働き方】だが、「AIによって仕事がなくなる」は大袈裟だとしながらも、「心配なのは技術の変化に取り残されること」だという。日本はそもそもICT(情報通信技術)の普及が諸外国に比べてすごく遅れている、と指摘する。技術の進化で失業する前に、技術の進化についていけず取り残される心配があるという。

 こうした変化に対して個人で対処して生き残れ、と多くのビジネス啓発書は説いているが、鈴木さんのアプローチは違う。「協働」が社会に新しい仕事と幸福をもたらすというのだ。「ひとりイノベーション」ではなく、漫画の『ONE PIECE』のように仲間と協力しながら一つひとつの課題を乗りこえていく生き方を勧める。

学び続ける自己投資

 そして【お金・自己投資】では、みんなで生き残るための自己投資をしよう、と訴える。実は約51%の社会人が「学んでいない」「勉強していない」というのだ(リクルートワークス研究所調べ)。なぜ、日本の社会人はあまり勉強しないのか。鈴木さんは「わざわざ自己投資をして『勉強して成長する』よりも、『組織への情緒的な適応を進める』ことこそが、個人がサヴァイヴするための合理的な戦略だった」と説明する。

 しかし、いま組織も産業構造の変化をにらんで「学び続ける」ことを社員に要求するようになっている。また多くの有力企業が採用にあたって学生の学業成績、とくにGPAという評定平均を重視しているそうだ。さらに学業の中身も詳しく精査される。学習へのモチベーションを持っているかどうかを見ているという。

 お金にかんして、「自分のお金は自分で作る」という項目は、まさに6月3日(2019年)、金融庁がまとめた人生100年時代の「資産寿命」の延ばし方の指針と呼応している。公的年金を老後の収入の柱とする一方で、若いころからの資産形成など「自助」を求めるものだ。

 鈴木さんもお金を殖やす「リスクテイク」の力が必要だと訴える。基礎的な金融知識がないと、40代で子どもの教育資金や老後資金の必要性に初めて気づき、手遅れになってしまうという。

もうひとつの場所をつくる

 では、年を取ってフローの収入がなくなったときにどうすればいいのか。著者がイメージするのは、「ひとつの集団や生活基盤に頼らずに、リスクを分散する」生き方だ。具体的には、家庭や会社だけではないもうひとつの場所、「サードプレイス」だ。

 このような社会の趨勢を考察したのが、ポーランドの社会学者ジークムント・バウマンだそうだ。ここで、最初に出てきた「協働」という概念と結びつく。

 社会学は、こうした協働関係やサードプレイスが自発的に築かれる社会を理想と考えてきたという。人生100年時代になり、「経済が未発達であった100年前に人類が考えていたコンセプトの出番が再びやってきた」と鈴木さんは書いている。

 テレビ朝日系の人気番組『人生の楽園』には、地方に移住した夫婦が地域の人に支えられ、限界集落の活性化に貢献する姿がしばしば登場する。彼らはお金のためだけに働いているのではない。ひとつの場を契機として、地域の人々が結びつく。田舎には「サードプレイス」の萌芽がすでに生まれているかもしれない。そこに多くの人が希望を見出しているからこその高視聴率だろう。

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