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「日本の最大の闇は自殺だ」 あるトランスジェンダーの闘い

  • 書名 12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと
  • 監修・編集・著者名モカ、高野真吾 著
  • 出版社名光文社
  • 出版年月日2019年4月30日
  • 定価本体920円+税
  • 判型・ページ数新書判・358ページ
  • ISBN9784334044060

 本書『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(光文社)は、なんともすごいタイトルだ。そして、これは実話だ。

マンションから飛び降り生還

 東京・新宿で、複数のバーや人気イベントを手がけ、経営者や漫画家として成功していたモカさんは、29歳の時、躁うつ病が悪化し、マンションの屋上から飛び降りた。しかし偶然にも車の上に落下し、奇跡的に生還した。過酷な入院生活の中での気づきを経て、その後は残る人生を社会貢献に使うことを決意。さまざまな悩みを抱える人からの人生相談に当たってきた。本書はそんなモカさんを朝日新聞記者の高野真吾さんが取材した本だ。

 第2章、「飛び降りたあの日」が衝撃的だ。2015年10月23日の明け方、モカさんは、精神安定剤を1シート、12粒飲み干した。恐怖心を克服するためだ。意識がもうろうとする中、空を見上げ、屋上から飛び降りた。

 次に目を開くと、病院の病室だった。母と弟がいた。全身骨折で、肺が破裂し、背骨と左腕は複雑骨折していた。痛みに耐える日々が始まった。

 その後の気づきを漫画家でもあるモカさん自身が漫画で描いている。「幸せとは愛だ」「答えは...常に目の前にある 愛は隣人を愛することだ」「仕事なんか辞めてお悩み相談をしよう」というセリフが出てくる。

 続く章から、高野さんがモカさんの幼少時代からを取材している。性別への違和感を覚え、10代半ばから新宿2丁目に出入りしていた。銀座ホステス、ウェブデザイン制作会社勤務を経て、2007年に女装イベント「プロパガンダ」を創設。日本最大規模の女装イベントに育て、年収1000万円を超すようになっていた。

 2010年にはタイで手術を受け、体も女性になった。数年後には戸籍も変え、戸籍上の名前も男性から女性にした。漫画家としてもデビューしたが、抗うつ剤や睡眠薬を大量に摂取し、自傷行為を繰り返すようになった。そして飛び降り。激痛の中から社会貢献を決意、知人を相手に無償で始めた「お悩み相談」は輪を広げ、専門サイト「モカのお悩み相談」も立ち上げ、これまでに約600人の相談に乗ってきたという。

「お金ってそこまで必要?」

 

相談の中で最も多いのは「お金」の問題だそうだ。そんな相談にはこう答える。

 
「いったんお金を必要としない生き方をしてみない?」  「お金ってそこまで必要?」
 

多くの相談から確立した「メンタルを強くする方法」を紹介している。

 1 部屋を片付ける
 2 人と会う時間と、独りでいる時間を、バランスよく取る
 3 忙しすぎない、暇になりすぎない
 4 ポジティブになる
 5 自分を信じる、自信を持つ
 6 人にしてあげる、頼られる
 7 時には人に甘える
 8 完璧を求めすぎない
 9 未来や過去ばかり考えない、いまを生きる
 10 あせらない、忍耐することも力である
 11 体を癒す
 12 素直になる、心の声に耳を傾ける
 13 攻撃しない、受け入れる
 14 相手の気持ちを考える

 日本の年間の自殺者は約2万人。モカさんは自殺が日本の最大の闇だと考えている。モカさんの取材を通して、高野さんも変わったと書いている。際物っぽい本かと思ったら、モカさんの生き方と自殺について真摯に向かい合う内容だった。「日本の戦争は自殺だ」というモカさんのことばは哲学的だが、その取り組みは実践的だ。高野さんはAV出演強要問題を継続的にフォローしてきた記者でもある。  

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