読むべき本、見逃していない?

ポリティカル・コレクトネスによる表現圧殺に疑義申す

  • 書名 欲望会議
  • サブタイトル「超」ポリコレ宣言
  • 監修・編集・著者名千葉雅也・二村ヒトシ・柴田英里 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2018年12月21日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・270ページ
  • ISBN9784044002121

 なんとも威勢のいい本が出たものだ。本書『欲望会議』(株式会社KADOKAWA)を読んだ感想だ。タイトルの「欲望」とは「性的欲望」のこと、副題の「ポリコレ」とは「ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)」のことだから、「超」ポリコレ宣言とは、ポリティカル・コレクトネスを重視する一方で、それに立ったさまざまな要求にも懐疑的だという立場を表したものだ。性にかんするさまざまな事象、エロ、ポルノ表現、#MeToo運動、LGBTなどについて3人の論者の鼎談をまとめたものだ。

 3人の顔ぶれがすごい。司会役も務める哲学者の千葉雅也さん(立命館大学大学院准教授)はゲイという立場を鮮明にして発言。AV監督の二村ヒトシさんは、恋愛やセックスについて多くの啓蒙書も書いており、本書でも「本当にそれが自分の欲望であるならアブノーマルも大いに結構、他人の人権を侵害しない限りにおいて人間(とくに女性は)もっと性的に自由であるべきだ」と主張する。

 ただ一人の女性である柴田英里さんは、彫刻を中心とする現代美術作家だが、男性至上の性愛表現に蓋をしようとする傾向を強く批判するため、ネットではいつも「炎上」している論者でもある。

 議論のネタは、マンガや映画などに及ぶ。というより、マンガと映画ネタが多い。女性が武器を取り活躍する『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)について、柴田さんが「映画を絶賛するフェミニストは自分が肯定できる暴力を求めている」と切り出すと、二村さんは「恋の憎しみを描いているんだって(という)映画評を、女性向けWEBの連載で書いて炎上したんですけど」と受け、日本の特撮のスーパー戦隊シリーズには、かならず悪役のなかに男より強い女性戦闘指揮官がいるというのは「ポリコレ」的になくなっている、と議論は続く。

 性暴力を扱った映画が抗議活動によって絶版になったり、公開中止になったりした実例について詳しく取り上げている。柴田さんは「実在の事件を基にしたクライム映画は普通に賞賛されたり、賞を取ったりするけれども、あらゆる暴力と犯罪の中で、レイプが絡んだ性暴力ものだけが、日本では猛烈にバッシングされる」と話す。

 #MeToo運動について千葉さんは、男女の分断を深め、「対称的に一部の女性嫌悪活動も過激化すると思う」と話している。柴田さんも冤罪だった場合の対応策もなく、日本で流行らなくてよかったという見解だ。

女性によるフェミニズム批判

 通読して感じたのは、フェミニズムにもいろいろあるということだ。柴田さんはこう書いている。「かつてはフェミニストとPTA保守は切り分けられていた。そういう自覚がフェミニストにあった。それがいまはもう融合するだけではなく、フェミニストがPTA保守の擁護と強化にまわっている。(中略)特定の表象を、何か普遍的な女性という概念に対する犯罪にしたいんじゃないか。私は、それは女性性の一元化・本質主義化にすごく近いと思います」と実名を挙げて強く批判している。

 本書は2016年7月に柴田さんが企画した「人類はもう欲望することをやめるかもしれない」というトークイベント(「カルチュラル・タイフーン2016」大会、東京藝術大学上野キャンパス)で一堂に会した3人が意気投合し、その後5回行った討論を編集したものだ。当然ゲラに朱を入れていると思うが、さまざまなネタ、事象について才気煥発、縦横無尽に語っている。驚くほど生産性が高く面白い鼎談だ。  

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