平成も残すところあと3か月あまり。新しい元号がはじまる5月を前に、いろいろあった平成を振り返ってみたい――本書『日本と世界の今がわかる さかのぼり現代史』(朝日新聞出版)はそんな人にぴったりだ。タイトルにもあるように、本書は現在から過去に向かってテーマごとに経緯がまとめられている。そして、よく読むと、単なる逆引きでなく、各テーマについて、過去のエピソードにも触れながら、そのとき情勢がどうして動いたのか、その根拠にも気づかされる。
第1章では日本の今を取りあげている。日米同盟や憲法改正、少子化など、複数のテーマについて、いったい今まで何があったのか、現代から過去に向かって記されている。
少子化については、合計特殊出生率(出生率)の基本知識として、例えば、人口維持に必要な出生率は2.07のところ、現在は1.4台であることや、過去はもっと低かった時期もあったことに触れたうえで、現在取り組んでいる少子化対策も解説している。
日本は、少子化だけでなく、高齢化、人口減という3つの人口問題を抱えている。それらの解決を目指して、国は2つのことに力を入れている。少子化対策と女性が働きやすい環境整備だ。専業主婦の方が出生率は上がりそうなイメージを持っていたが、統計上は違っていた。本書によると、「欧米では00年代以降、女性の労働力参加率が伸びている国ほど、出生率も改善しているデータ」があるのだという。
本書を読みすすめると、なるほど!そういうことなのか!ということも、時代を追って理解できるので参考になる。
憲法改正のテーマでは、憲法9条と自衛隊の関係について解説している。03年のイラク特別措置法や、92年のPKO協力法など、新聞紙面をにぎわせた大きなトピックをおさえつつも、そもそも、なぜ、自衛隊が海外に出ていくようになったのか?お金ではなく人の国際支援が注目されたきっかけは何か?などの経緯が簡潔に説明されていてわかりやすい。
第2章では、国際情勢を取りあげている。「なぜ、アメリカは世界の警察官を降りようとしているのか?」、「なぜ、イギリスはEUからの離脱を決断したのか?」「なぜ、プーチンは長期政権を維持できているのか?」という一般教養としても知っていて損はないテーマについて、その経緯が短時間で把握できる内容になっている。
例えば、イギリスのEU離脱については、13年のキャメロン首相による国民投票の宣言や、16年に行われた国民投票で離脱派が勝利した流れ、イギリス国内で離脱を支持した層の特徴などの基礎知識も掲載している。加えて、それ以前の時代で、ECへイギリスがなかなか加盟できなかった経緯なども丁寧に解説されている。また、英連邦王国の盟主としてのイギリスの歴史にも触れており、本書を読むと、イギリスのEU離脱は、あまり驚くことではない、自然の流れなのかもしれないと思ってしまった。イギリスのEU脱退は、3月29日だ。
本書を眺めて気づくのは、当たり前ではあるが、社会情勢は常に変化してきた、そして、今後も、同じように変化していくであろうということ。それゆえに、社会情勢の経緯を知っていると、新しいニュースが話題になるたびに自分の考えも述べやすく、会話の厚みも増しそうだ。
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