散歩を「さんぽ」と書くと、なんだか急に気楽な感じになる。本書『図書館さんぽ――本のある空間で世界を広げる』(駒草出版)もそうだ。「図書館」が身近に感じられる。
少し敷居が高くて堅苦しいイメージもある図書館。社会人になってからは行ったことがないという人も少なくないのでは。本書は、周辺の散歩コースやカフェなども紹介している。しばらく図書館に行っていない人には特におススメだ。
図書館というと、まずどこを思い浮かべるだろうか。近所の図書館しか行ったことがない人もおれば、しばしば国会図書館に出かけて古い本や雑誌、過去の新聞などを調べる人もいるだろう。いわば千差万別、住んでいる場所や仕事、関心事、利用の仕方によって図書館のイメージは相当異なる。
本書には全国約130の図書館が紹介されている。国会図書館、日比谷図書館など代表的な図書館はもちろんだが、全国各地に最近できた新しい図書館を積極的に取り上げているのが大きな特徴だ。それぞれ館内写真や簡単な説明文が付いているので、大体どんなところかわかる。
なるほど、と思った図書館がいくつかあった。例えば秋田にある国際教養大学の中嶋記念図書館。この大学は近年、非常に評価が高いことで知られるが、この図書館を見てナットクした。コロシアム形式の円弧になった書籍棚が際立つ。24時間365日オープンというのもすごい。図書館関係者の間では「一度は行ってみたい図書館」として有名らしい。この空間に足を踏み入れた途端に、自然に勉強せねばという気になる。
陸前高田市立図書館というのもいい感じだ。震災で全壊した旧図書館を、市の中心部の商業施設に併設する形で2017年にオープンした。建物は木造平屋づくり。地場の材木を使っているという。復興は、知の拠点づくりから、という為政者や市民の心意気が伝わる。
福井県立図書館も紹介されている。個人の貸し出し冊数が6年連続全国一位ということで有名だ。県民1人が年1冊借りているという。シニア世代に関心が高い分野の本を特集する「いきいきライフ」応援コーナーもあるそうだ。福井県は「幸福度」「学力」「女性の社会進出率」などいくつかの指標で全国一位になっているが、そのベースには「図書館力」もあるに違いない。
本の貸し出しには登録が必要だから、自分が良く利用している図書館以外は行ったことがないという人がほとんどではないか。本書を手引きに、普段使いではない図書館にも足を伸ばしてみてはどうだろう。自分の知的世界が意外な形で開けるのではないか。本書にはJ-CASTで紹介中の「東洋文庫」も登場している。洋書の古書が並ぶ一角は、まるで大英博物館にいるかのようで、一度は体験してみたい。
BOOKウォッチ編集部は極めてひんぱんに図書館のお世話になっている。書店の新刊書コーナーとは全く違った品ぞろえで、なかなか興味深い新刊本が並んでいるからだ。こんな本にどうして目を付けたのかと思うこともしばしば。そこで見つけて紹介した『精神障がいのある親に育てられた子どもの語り』(明石書店)は、本欄で長く閲覧ランキングのトップだった。最近はネットで各図書館の新刊チェックもできるが、実際に足を運ぶとまた違う発見もある。熱心に本を読んだり、勉強したりしている人の姿を間近に見るだけでも刺激になる。
本書は図書館に詳しい図書館さんぽ研究会の編集。イラスト、地図、漫画、インタビューなどもあり、非常に読みやすい。
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