先日本欄で紹介した『スマホを落としただけなのに』(宝島社)は、第15回『このミステリーがすごい!』大賞最終選考作品を改題し、加筆修正したもの。受賞は逃したものの、今月映画化されたこともあり話題の作品だ。
本書『カササギの計略』(宝島社)は、第14回『このミステリーがすごい!』の受賞には及ばなかったが、大賞最終選考作品を全面改稿の上、編集部が推薦する「隠し玉」としての刊行が決定したもの。著者の才羽楽(さいば らく)さんは1983年生まれ。本作がデビュー作となる。
『このミステリーがすごい!』の一次審査委員を務める宇田川拓也さん(船橋市ときわ書房本店勤務)は、本書の解説で「歴代受賞作と比較しても決して引けを取らない強烈かつ魅力的なオープニング」「新人賞応募作には意味のない無駄な会話を書き連ねたものが少なくないなか、模範として挙げたくなるくらいひと際センスよく光っていて、たちまち好感を覚えた」「今後の大きな活躍が愉しみでならない新たな才能」と、絶賛している。
僕が、大学の講義とアルバイトを終えてアパートに帰ると、部屋の前に見知らぬ美しい女性がいた。彼女は「岡部くん」と言い、僕が「どちらさまですか?」と訊ねると、彼女は「ミシェル」と名乗った。すると次の瞬間、僕は力いっぱいの平手打ちをくらった。「はやく、開けてよ」と馴れ馴れしく命じられ、仕方なく、僕は彼女を部屋に入れた。
僕と彼女の関係のヒントを要求すると、彼女は七夕伝説の話を始め、「もし、織女か牽牛のどちらかが、一年に一度の会う約束を忘れてしまったら、どうなると思う?...だから、会いに来たのよ、あなたに」と言う。名前は華子、また明日来ると言い残し、彼女は部屋から出て行った。僕には約束をした覚えはなく、疑問しかなかった。
華子は予告どおり再び現れ「今日、ここに泊まるの」と告げた。「日ごろから後悔のないように生きて、いつ地球が終わる日が来ても後悔したくない。...私の願いを叶えるのを手伝ってほしいのよ」と、華子は強引にあれこれと注文をつけてくる。華子の正体を知るためにも、そして実のところ華子に好意を抱き始めていた僕は、流れに身を任せることにする。
ところが、同棲生活を続けるにつれて、恋人ができたかのような幸福感に浸っていた僕に突然、華子は告げた。「私、もうすぐ死ぬの」――。
僕と華子の接点、華子の正体、華子の病気、ミシェルというあだ名とは? いくつもの疑問を僕と読者に抱かせたまま、300ページを過ぎたところで、これまで物語の前提だと思い込んでいた土台が覆されていく。帯にある「ホワイトどんでん返し」の意味が、終盤にようやくわかる。悲しい結末ではないだろうと予想し、安心して読んでいたが...この展開を予想できた読者はいるだろうか?
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