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さだまさしが「1兆人に1人」のレアな存在になるまで

うらさだ

 えっ!? アベサダ? ナベサダ? 本書『うらさだ』(小学館)は、著者名の「さだまさしとゆかいな仲間たち」とセットで何についての本か分かるようになっている。デビュー45周年の歌手のほか、作家、テレビのキャスターなどマルチなキャリアを持つさだまさしさんの、いわば「評伝集」。東日本大震災の被災地で歌い続けていることでも知られるさださんのフォロワーは多く、その人柄に魅せられた著名人らが「さだまさしについてのプロファイリング」を寄せている。

「さだまさし? 誰それ?」という人にこそ

 「ゆかいな仲間たち」のメンバーは多彩。なかには、えっ!この人がという意外な印象の人の名前も見える。本書の企画者であり「案内人」と「解説者」を務めるミュージシャンの寺岡呼人さんは「『さだまさし? 誰それ?』という人にこそ、手にとってほしいと思う」と述べるが、さださんをよく知らない人にとっては、どの人も意外かもしれない。

 「意外」な印象は、間違っていなかったようで、登場する寄稿者のうち、最初はさださんとは距離感があったことを告白する人が少なくない。いったんお互いを知り懇意になるプロセスは共通している。立川談春さんは、ファンであるにもかかわらず「『さだまさしを堂々と好きと言っちゃいけない』ということに気付き、大人になってもさだまさし好きを秘密にしていたという。泉谷しげるさんにいたっては「さだまさしとは友だちにならねぇだろうな。最初はそう思ってましたよ」

「友だちにならねぇだろうな」

 泉谷さんの、当初のさだまさしアレルギーは、その「四畳半フォーク」的に聞こえた歌からだ。ところが、莫大な借金をしながら映画(「長江」)作りに挑む姿にスケールの大きさを感じて親しみを増し、いつの間にかステージを共にするようになっていた。

 音楽的には合わない印象だったのに、転じて、さださんの「フォーク」にはまるようになったのはアルフィーの高見沢俊彦さんも同じようだ。当初は「自分とは違う世界の人」と思っていたが、じっくり聴いてみて、確かな情景描写や心理描写がつくり出す骨太な世界観に心奪われたことを明かしている。

 泉谷さんも、高見沢さんも、他の寄稿者も、さださんとの最初の出会いをきっかけにプライベートでも親しくなっていくのだが、さださんに対する共通の評価は気配りのよさだ。高見沢さんは、口約束で終わるだろうなと期待していなかった、女優の松坂慶子さんとの会食を実現させてくれたことで「この人、いい人だなあ」としみじみ。「さださんの評価はここで絶対になりました」とフォロワー宣言をしたものだ。

鎌田實医師「共感のホルモン大量分泌」

 マルチな活動を展開しているさださんの「ゆかいな仲間たち」は、音楽・芸能関係者ばかりではない。地域医療に対する取り組みなどで知られる医師、鎌田實さんは、さださんについて、共感のホルモンである「オキシトシン」が体内で大量に分泌されていると「勝手に診断」。これも勝手に名づけた「オキシトシン過剰症候群」という「不治の病」であるさださんは、どこかに困っている人があると聞けば、すぐに飛んで行ってしまうのだという。

 このあたりさださんのパーソナリティーが、先述の寺岡さんに本書を企画する気にさせ、「ゆかいな仲間たち」やファンを引き付ける磁力になっているらしい。

 さださんさんは、東日本大震災が発生したほぼ3か月後の2011年6月、被災地の福島や宮城、岩手を訪問。福島では鎌田医師と合流しミニライブを行い、集まった1000ほどの人たちは、鎌田医師の話やさださんの歌に励まされ涙したという。

ホリエモン仰天

 「まさしさんの凄いところは、被災者の方だけではなく、僕のような何か支援したいと思っている人たちにも目を配ることです」と鎌田医師。さださんは、鎌田さんらの活動資金ねん出のため、被災地以外でのトーク&ライブを提案。その収益を手に福島を訪ね8か所近くの避難所を回り、さださんはそれぞれの場所でなおギター1本で歌ったものだ。鎌田さんは「このエネルギーは尋常ではない」と思ったという。

 このさださんらの活動がのちに、大規模災害の復旧現場で活動を支援するための「風に立つライオン基金」設立につながったという。本書の印税の一部は、公益財団法人「風に立つライオン基金」に寄付される。

 ほかに、笑福亭鶴瓶さん、小林幸子さん、カズレーザーさん、堀江貴文さんらが、さださんの人柄などについて語っているが、マルチな活躍で知られる堀江さん、さださんのマルチぶりは「1兆人に1人のレアな価値」と述べているのが印象的だ。

  • 書名 うらさだ
  • 監修・編集・著者名さだまさしとゆかいな仲間たち
  • 出版社名小学館
  • 出版年月日2018年9月27日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数新書・224ページ
  • ISBN9784093886420

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