読むべき本、見逃していない?

オウム事件、死刑執行でも謎解きは終わらない

オウム真理教事件とは何だったのか

 未解決事件をテーマにしたノンフィクションを次々に発表してきたジャーナリスト、一橋文哉氏の新刊が『オウム真理教事件とは何だったのか?』(PHP新書)だ。オウム真理教が引き起こした一連の事件で教祖の麻原彰晃・死刑囚ら幹部の死刑が執行されたのを機に刊行された。

 死刑執行の様子から本書は始まる。「何をする。バカヤロー」と泣き叫ぶ麻原を4人がかりで死刑台の上に立たせた、と書いている。余り世間に出てない話だ。麻原の死後、口を閉ざしていた人々が語りはじめ、新事実が明らかになってきたという。

 オウム真理教を立ち上げる以前の話が興味深い。麻原は1976年7月に知人を殴打して傷害容疑で逮捕され、9月に八代簡裁で罰金刑判決を受けた。77年3月の上京までに半年の空白期間があり、何をしていたか謎だったという。この期間を知る関係者の取材から大分県別府市の山口組系のやくざの大親分に麻原は可愛がられていたことが分かった。詐欺師と宗教家というふたつの顔は、この時期に芽生えたと著者は指摘する。

 オウム真理教には『宇宙戦艦ヤマト』など人気SFアニメの影響が見られる。オウムの教義や修行方法を麻原とともに作り上げた古参信者の「長老」という人物は、阿含宗の信者だったそうで、麻原も阿含宗に入っていた。「長老」は語学が堪能で学識のある信者を集めて「翻訳研究班」を作り、教義を作ったという。今回、彼は初めて取材に応じ、「教義上はオウムを離れると地獄、特にグルを裏切れば転生する先は無間地獄とされています。教団は常に仮想敵を設けて、ハルマゲドンや無間地獄の恐怖をチラつかせて信者を後ろからせき立てるし、機械の如くこき使います。そうした信者に苦痛を強いるような組織を保てたのは、信者同士が相互監視する密告社会を築いたからなんです」と答えている。

オウムは核兵器を入手していた?

 「陰謀論」は一橋氏の得意とするところだが、今回も面目躍如だ。オウムがロシアに橋頭堡を築いていたことは知られるが、オウムと取引した武器商人に取材、オウムの本当の狙いは核兵器で、すでに入手していたという驚くべき証言を引き出している。ウクライナや北朝鮮の人脈が暗躍していた話も紹介している。

 さらにナンバー2の村井秀夫を衆人環視の中、殺害し懲役12年の実刑判決を受けて服役後、出所した元暴力団員の周辺も取材している。

 ところで、ニュース好き芸人のプチ鹿島さんは「以前、『一橋文哉』という人のルポシリーズをワクワクしながら読んでいた。『赤報隊』・『グリコ・森永』・『3億円事件』・『オウム』など、いわゆる闇に包まれた事件を解明するルポ。大変な事実にたどり着く興奮と、それなのに他のメディアに後追いされない(黙殺)ところが、なんだか『水曜スペシャル 社会派編』のようで楽しんでいた。『半信半疑』の醍醐味。」と自分のブログに一橋氏への感想をのべている。

 オウム真理教事件にかんしては、先日死刑を執行された元幹部に焦点を当てた『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』、地下鉄サリン事件の直後に起きた警察庁長官狙撃事件の真犯人を元警視庁刑事が名指しした『宿命 警察庁長官狙撃事件』を本欄では紹介している。長官狙撃事件についての見立ては本書とまったく異なる。オウム関連本の出版は今年(2018年)の死刑執行以後もまだまだ続くだろう。  

  • 書名 オウム真理教事件とは何だったのか
  • サブタイトル麻原彰晃の正体と封印された闇社会
  • 監修・編集・著者名一橋文哉 著
  • 出版社名PHP研究所
  • 出版年月日2018年8月14日
  • 定価本体920円+税
  • 判型・ページ数新書判・355ページ
  • ISBN9784569838175

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