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そろそろ「京都初心者」を卒業したい人へ

カラー版 重ね地図で読み解く京都1000年の歴史

 京都が好きで何度も出かける人が多い。しかし、いつも同じようなところを回っている人がほとんどだろう。本書『カラー版 重ね地図で読み解く京都1000年の歴史』 (宝島社新書)は「京都初心者」を卒業し、少しステップアップして「中級」を目指そうとする京都好き向けのガイドブックだ。17の散策コースが紹介されている。

京都の歴史を時代ごとに切り取って散策コースを紹介

 タイトルに「重ね地図で読み解く」とうたわれている。「平安初期の上京」「戦国時代の下京」「安土桃山時代の伏見」「明治維新前後の岡崎・白川」の古地図が現在の地図と重ねる形で参照されている。「平安」「安土桃山」と現代の都市図を透かして見ることができるというのは京都ならではと言える。

 一般に京都を訪れる時は名所めぐりとなる。平安、室町、江戸、幕末などの旧跡を、ごっちゃに回ることが多い。本書の特徴は、地域ごとに歴史を区切って紹介していることだ。たとえば上京については、次の4つのコースに分けて解説している。

 「平安時代・・・平安宮・貴族邸コース」「室町時代・・・応仁・文明の乱コース」「安土桃山時代・・・御土居コース」「幕末・・・幕末の志士コース」。

 それぞれの「スタート」と「ゴール」地点が明示され、コースをたどる。「平安」なら、円町駅を降りて、東に向かい、京都市平安京創生館で古都の復元図を頭に入れる。そこから平安京内裏跡などの石碑をたどる。これらの石碑はたいがい昔ながらの町家やビルの脇などにひっそりと立っている。堀川通を南に進むと二条通。平安時代は二条大路と呼ばれた貴族の邸宅街だった。現在の千本通は、平安京のメーンストリートの朱雀大路とほぼ重なる。こうして平安時代の庶民の一人になったつもりで平安京の規模を体感していく。ゴールは二条駅だ。このエリアには二条城などがあり、通常はそこにまっしぐらだが、本書では「幕末コース」のゴールとして設定されている。

 「重ね地図」がタイトルで強調されているが、むしろ、京都の歴史を時代ごとに切り取って散策コースを紹介したガイド本という感じが強い。これまで見過ごされがちだった旧跡などを、丁寧に点と点で結んで歴史を浮かび上がらせる。そうした意味合いでは、なかなかの労作と言える。

 本書は新書であり、さらに詳しく古地図との比較などを知りたい人には、新創社の『京都時代MAP』シリーズなどがある。

 監修者の谷川彰英さんは1945年生まれ。筑波大学教授・副学長を歴任。退職と同時にノンフィクション作家に転身し、『47都道府県・地名由来百科』『戦国武将はなぜその「地名」をつけたのか?』『千葉 地名の由来を歩く』など多数の著書がある。

  • 書名 カラー版 重ね地図で読み解く京都1000年の歴史
  • 監修・編集・著者名谷川 彰英 (監修)
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2018年6月 9日
  • 定価本体1100円+税
  • 判型・ページ数新書・223ページ
  • ISBN9784800283023
 

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