日本人には書きにくい本だ。海外の著名人の名前がずらり並んでいる。シェイクスピアからデヴィッド・ボウイ、スティーブ・ジョブズまで多彩だ。
本書『すごいイノベーター70人のアイデア』(TAC出版)は世界的な偉人のユニークさを紹介し、あなたも真似すればすごいことができるようになるかもしれないと教えてくれる。一種の啓発本だが、知的な装いをこらしているところがさすがだ。
著者のポール・スローンさんはケンブリッジ大学で工学を学び、IBM 社に入社するとトップセールスマンとなる。マーケティング部門長や専務にまで上りつめたのち、ソフトウェア会社各社のCEO に就任した。著書に『ポール・スローンのウミガメのスープ』、『ポール・スローンの思考力を鍛える30 の習慣』などがあり、リーダーシップやイノベーション、パズルに関する著作など25 点を超えるそうだ。
本書は「プロセスの変え方に学ぶ」「取り入れ方に学ぶ」「視点の変え方に学ぶ」「人とのかかわり方に学ぶ」「伝え方に学ぶ」「価値のつくり方に学ぶ」「苦境の切り抜け方に学ぶ」「高い志に学ぶ」の各章に分かれ、それぞれに当てはまるイノベーターを紹介している。 とにかく、これだけ有名人が並べば、どこから読み始めようかと迷ってしまう。著者は上手い手口を考えたものだと感心する。
たとえば「苦境の切り抜け方に学ぶ」では、ミケランジェロ、モーツァルト、ベートーヴェン。「視点の変え方に学ぶ」では、ガリレオ・ガリレイやシェイクスピア。「人とのかかわり方に学ぶ」では、ウディ・アレン、アンデルセン、ダーウィン、エジソン。「伝え方に学ぶ」ではナイチンゲール、サルバドール・ダリ。「価値のつくり方に学ぶ」では、ジェフ・ベゾス、マドンナ、マイルス・デイヴィス、スティーブ・ジョブズ、ピカソ。とにかく有名人のオンパレード。日本人もソニーの盛田昭夫とホンダの本田宗一郎が入っている。
ちょっと変わったところでは「イケア」、「マグドナルド」、「リーバイス」、「ハイアール」などの創業者、電子レンジやポラロイドカメラの発明者、マイクロプロセッサーや携帯電話、IBMのPC開発者の名前も入っている。ウォルト・ディズニー、ケネディ、ガンジーなども登場し、まさに多士済々だ。
それぞれの業績をイラスト付きで紹介し、そこから真似できそうなところを「自分を変えるアイデア」という形でアドバイスする。著者が科学やテクノロジー、ビジネスにも通じているからこそ可能な著作ともえる。
欧米では本書の著者のように、自身が巨大なコンピューターやウィキペディアのようになって、広範囲のことをまとめ直し書籍化する人が時折いる。知識の絶対量がずば抜けているだけでなく、アプローチに独自性があり、理系・文系・芸術系などをいっしょくたにして再構成してしまう。その意味では著者自身も、「すごいイノベーター」なのかもしれない。
本書は一応、ビジネスマンを読者として念頭に置いているのだろうが、むしろ小学校の高学年から中学生や高校生向けかもしれない。20歳を過ぎて手に取るようでは遅すぎる気がする。お子さんをお持ちのお父さんは、自分が啓発されることは諦めて、子どもへの誕生日プレゼントにすると、見直されるかもしれない。本欄で以前紹介した『世界を変えた50人の女性科学者たち』(創元社)と同類の本だと思う。
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