読むべき本、見逃していない?

トランプ大統領にいちばん読んでほしいベストセラー

24歳の僕が、オバマ大統領のスピーチライターに?!

 米国でトランプ大統領が誕生した当時は、同国内ばかりか日本など世界各国にも世界各国に衝撃をもたらした。多様性のアメリカならではのハプニングとも捉えられているが、本書『24歳の僕が、オバマ大統領のスピーチライターに?!』(光文社)もまた、その多様性の発露に違いない。大学を出たばかりの若者が大統領の演説原稿執筆スタッフとなり、新鮮な観察眼を通して記したオバマ大統領の素顔とホワイトハウスの内幕を収めた回想録。米国では昨年出版されベストセラー入り、同年の「ベストブック」にも名を連ねた。

史上最年少のスピーチライター

 原題は「THANKS, OBAMA(ありがとう、オバマ)」。オバマ大統領の退任間際に、しばしば聞かれたフレーズだ。そして副題に「My Hopey, Changey White House Years」。「Hopey, Changey」は、オバマ大統領1期目の中間選挙前に、共和党の政治家サラ・ペイリン氏が、同大統領が強調する「Hope(希望)」や「Change(変革)」の成果がないことを皮肉り使うようになった「How's that hopey-changey thing workin' out for you?(あの希望と変革とやらは、いったいどうなったんでしょうね)」というフレーズから採られたものらしい。

 著者のデビッド・リットさんは、エール大学の学生だった2008年からオバマ大統領が最初に当選する選挙で運動組織に参加。11年にホワイトハウスに入り、2016年に退任するまで、大統領および大統領上級スタッフのスピーチライター特別アシスタントを務めた。オバマ大統領にはスピーチライターが8人おり、リットさんはそのうちの一人で「史上最年少のうちのひとり」と紹介されている。

 リットさんはもともと熱烈な民主党支持者で、04年の大統領選挙では大学の先輩でもあるジョン・ケリー氏(元国務長官)の運動に参加。ケリー氏の敗退で落ち込んでいた際に、上院議員に当選してまだ間もないオバマ氏の演説を聞いて運命的なものを感じ大統領選の運動を手伝うことにしたものだ。その熱心な活動ぶりからワシントンに招かれスタッフ入りしたものだ。

オバマの8年間は感情のジェットコースター

 「チェンジ」を合言葉に、大きな期待を背負って登場したオバマ大統領。著者らスタッフももちろん、盛り上がる選挙運動からホワイトハウスでの活動へと、高揚した様子が伝わってくる。だがオバマ大統領の舵取りが順風満帆とはいかなかったのはご存じの通り。ペイリン氏の言葉を副題に採ったのは、それが「いい質問」であり、ある意味、オバマ大統領時代を象徴する表現にふさわしいと考えたかららしい。著者はオバマ氏の任期を総括してこう述べる。

 「僕は二十代の大半をオバマ・ワールドで過ごした。キャリアという点では成功した。だが、そのほかの点ではどうだろう? バラク・オバマという人物に魅せられた無数の人々同様、この8年間は感情のジェットコースターに乗っているようなものだった。大統領選の画期的な勝利も、中間選挙の大敗で台なしになった。医療保険改革法を通過させた喜びもつかの間、それを守るのに大変な苦労を強いられた。ホワイトハウスに初めて黒人の大統領が登場したことで、国民の融和がいっそう完璧なものになったが、1年後には、アメリカの欠点を擬人化したようなドナルド・トランプにその座を明け渡すことになった」

 本書が米国でベストセラーになったのは、トランプ政権下で社会の分断が進むなどして、オバマ時代の方がマシだったと懐かしむ雰囲気が強まったことが考えられる。民主党支持者である著者にとっては当然のことではあるが、リットさんは、今の政治的情勢にかかわらず、長い目でみれば、オバマ氏が守ってきた政治スタンスは受け継がれても、トランプ大統領の手法は一過性に終わるだろうと主張している。

 かといって、本書は際立って反トランプを唱えているような政治的回想録ではない。20代の若者が初めて経験するホワイトハウスや、大統領専用機エアフォースワンでの過ごし方について述べたところなど興味深い。ホワイトハウスで最も高級な「メンズルーム」を紹介するなどトリビアも。建物が非常に狭くすべてのスタッフを収容しきれないため近隣に間借りしており効率が悪いと不満があった。エアフォースワン機内では「着替え厳禁」。食事が豊富過ぎるほど提供されており、気を付けていないと体調管理に問題が生じるそう。セキュリティー面からあることを怠るとシークレットサービスに撃たれる可能性があるかも―などと軽妙に綴っている。

  • 書名 24歳の僕が、オバマ大統領のスピーチライターに?!
  • 監修・編集・著者名デビッド・リット著、山田 美明 訳
  • 出版社名光文社
  • 出版年月日2018年5月16日
  • 定価本体2000円+税
  • 判型・ページ数B6判・471ページ
  • ISBN9784334962180

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