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光浦靖子さんは「永遠に女子大生気分」なのだ

ハタからみると、凪日記

 本書『ハタからみると、凪日記』(毎日新聞出版)は、お笑い芸人光浦靖子さんの8年ぶりのエッセイ集だ。「オアシズ」の相棒大久保佳代子さんとは、最近それぞれピンでの仕事が多いせいか一緒に登場するのを見る機会は少ない。つい先日も、光浦さんはNHKの「土偶」の歴史を探求する番組に出演していた。東京外国語大学出身の光浦さんは、このようなちょっと知的な番組で自然な笑いを取るという独自のポジションを確立している。光浦さん似として紹介されていた土偶はかなり微妙だったが。

 1971年生まれで独身の光浦さんだから、恋愛や結婚ネタについても書いている。だが、光浦さんはストレートに書いたりしない。「友達を増やすコツ」と題し、ともかく誘うこと、深く考えず、鈍感であればいい、と書く。「二回断った人は二つに分かれます。私のことを避けている人。私のことを好いてくれているが、本当にスケジュールが合わない人。好いてくれている人は必ず別日を提示するか、次、私を誘ってくれます」として、二回誘うことを勧める。そして、そういう「バカ」になったノリで芸人や俳優、歌手に声をかけてライブを成功させたことを報告した後、いいなと思う男の子に五回ドタキャンされたと書いてオチに。これはひどすぎる。それにしても四回ドタキャンされても誘う光浦さんもすごいが。

 『世界で一番乙女な生きもの』『男子がもらって困るブローチ集』『靖子の夢』など著書の多い光浦さんだが、「事前になにかを見る、なにかを読む」という仕事が多いそうだ。海外ドラマの番宣番組の資料としてDVD22話分を渡された。面白くて見るのをやめられなくなった。折しも別の連載の締め切りが重なっていて、マネジャーからは催促のメールの連続。でもどうしても、その1本が書けない。「涙が出てきたので、気を静めるために、とりあえず十八話を見ることにした。許してつかぁさい」。光浦さんは忙しいのだ。

 本書の最後は「めちゃイケ」と題し、今年(2018年)3月に修了した「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系)の思い出に。このチームにかかわっての25年が、そのまま光浦さんの芸歴25年に重なるという。ネタは3つしかないのに10本持っているとウソをつき、フジテレビのリハーサル室に。すぐにウソはばれ、光浦さんは「わたしら、ただの女子大生ですもん」と泣いて謝ったという。それでも数日閉じ込められ、ネタ作りをした。結局、コントはオンエアに耐えず、半分以上をトークという編集に。そこでのトークが評価され、光浦さんだけが新しい番組に出演することになったそうだ。

 しかし、地獄の日々が始まった。「今日もダメだった」と思ううちに、フジテレビの局舎の球体に祈るようになった。「この番組が終わるまでに五百回笑いが取れますように」。芸歴25年とは気がつかなかった。

 毎日新聞中部版の2012年からの連載をまとめたもの。帯に「アラフォーでたどり着いた新境地」とあるが、「アラフィフ」に近づいたのでは。それでも永遠に女子大生気分が抜けきれない光浦さんの魅力が満載の本だ。  

  • 書名 ハタからみると、凪日記
  • 監修・編集・著者名光浦靖子 著
  • 出版社名毎日新聞出版
  • 出版年月日2018年6月30日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・204ページ
  • ISBN9784620325286
 

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