読むべき本、見逃していない?

2020年から大学入試にTOEFLやTOEIC、大丈夫なのか?

  • 書名 検証 迷走する英語入試
  • サブタイトルスピーキング導入と民間委託
  • 監修・編集・著者名南風原 朝和 編
  • 出版社名岩波書店
  • 出版年月日2018年6月 6日
  • 定価本体660円+税
  • 判型・ページ数A5判・96ページ
  • ISBN9784002709840

 2020年の大学入試から、スピーキングテストが導入される。TOEFL、TOEICなど8種類の英語民間試験のいずれかを受験しなければならなくなる。高校の勉強だけで間に合うのか、異なる民間テストの結果をどう比較するのか、など、その是非や方法について関心が高まっている。

 すでにBOOKウォッチでも『TOEIC亡国論』などを紹介してきた。本書『検証 迷走する英語入試』(岩波ブックレット)もそうした批判的な角度からの一冊。

大御所、重鎮からも懸念の声

 類書とやや異なるのは、本書の執筆陣だ。全体の編者、南風原朝和さんは東京大学教授で教育学部長。東大の副学長も経験し、日本テスト学会の副理事長も務める。専門は心理統計学・テスト理論。文科省による新テスト等の具体的な方策について検討する「システム会議」の委員でもあった。主要大学の学長経験者らが参加していた。

 本書は5章に分かれているが、第2章を担当している宮本久也さんは三多摩の有力進学校、八王子東高校の校長。前全国高等学校協議会の会長でもある。3章は、英語関係の著書が多い羽藤由美・京都工芸繊維大学教授、4章も英米文学者の阿部公彦・東京大学大学院人文社会学研究科教授、5章の荒井克弘・東北大学名誉教授は大学入試センターの副所長や日本高等教育学会会長を務めた。

 以上からわかるように、本書は教育学や英語学、高校教育、大学入試などについてのそうそうたる専門家が執筆者として名を連ねており、その意味では、特定の研究者の不満や異論というものではない。日本テスト学会の副理事長、前全国高等学校協議会の会長、大学入試センターの副所長や日本高等教育学会会長など業界団体の重職経験者が目立つ。逆に言えば、そうした人たちが懸念を表明する新テストは大丈夫なのかと心配にもなる。そのせいか発売1か月余の7月17日現在で早くもアマゾンの教育行政・法律部門では1位、英語・外国語部門でも2位にランクインしている。

非公開の審議で一気に進む

 まず、南風原さんは、拙速・強引な政策決定のプロセスに疑問をはさむ。本書刊行について、「この入試改革が決して万全なものではなく、それどころか、実は多くの問題をはらむ、非常に危ういものであることを明らかにするのが目的である」「そのような危うい改革が進められようとしている現状に危機感をもったメンバーが、緊急出版することになった」と説明する。

 宮本さんは「高校から見た英語入試改革の問題点」を論じ、羽藤さんは、自らスピーキングテストの開発を主導してきた経験から、共通テストとして複数の民間英語試験を導入する問題点を詳述する。すでに『史上最悪の英語政策--ウソだらけの「4技能」看板』(ひつじ書房)を上梓している阿部さんは、スピーキングテストによって英語能力が向上するというのは本当か、改めて検証する。さらに荒井さんは高校と大学をつなぐ「高大改革」の迷走ぶりを証言している。

 導入までの経緯について、南風原さんは、有識者による公開の「システム会議」が終了した後、文科省による非公開の審議に移行、英語入試改革の流れが一気に現在の形に進んだと記す。阿部さんは、この政策を強力に主導したのは下村博文文科大臣(当時)であり、教育関連業界に政治資金を「お願い」してきた方です(朝日新聞2017年12月3日)と注意喚起する。また、民間試験導入の流れの一つとなった「英語教育の在り方に関する有識者会議」で発言力が強かった楽天の社長・三木谷浩史はその後、英語教育事業を立ち上げていると皮肉る。

 前文部事務次官の前川喜平さんは近著『面従腹背』(毎日新聞出版)で、意に反する政策をすすめなければならないことが多々あったと振り返っているが、この「スピーキングテスト」もその一つだったのだろうか。

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?