鉄道にかんする本は実に多いが、鉄道関係者や鉄道ファンによるものがほとんどだ。本書『鉄道ふしぎ探検隊』(日本経済新聞出版社)の著者、河尻定さんは日本経済新聞記者で、2011年から日経電子版で「東京ふしぎ探検隊」を連載している。その中から鉄道をテーマにまとめたものだ。だから、一般の人の眼から見た「東京の鉄道の不思議」に焦点が当てられている。
東京の鉄道の中心、JR東京駅の東海道新幹線の一番西側にある14・15番線ホームは途中から大きく西側にカーブしている。東海道新幹線よりも東北新幹線に寄り添う感じだ。なぜなのか? 当初、国鉄は東海道新幹線と東北新幹線の直通運転を想定していた。そのため、東北新幹線用としていた14・15番線を需要が増えた東海道新幹線用に回したという。
その後、直通運転の構想はしぼんだが、1982年、東北新幹線が盛岡~大宮間で暫定開業すると直通計画が再浮上した。仙台~名古屋間など中距離なら飛行機から需要を奪えると判断、直通を可能とする新型車両を随時投入する、と日経新聞は報じた(1983年11月17日付)。しかし、1987年に国鉄が民営化され、東北新幹線はJR東日本、東海道新幹線はJR東海に分かれると、直通構想は暗礁に乗り上げた。東海道新幹線はパンク状態に近づいており直通は困難とするJR東海に対して、JR東日本は東海道新幹線が使っている14番線に東北新幹線を乗り入れさせるよう要望したが実現しないまま、1996年、正式に直通計画は中止となった。
河尻さんはリニア中央新幹線が名古屋まで開業する2027年以降に、直通運転の可能性があるのではと見ている。東海道新幹線の本数が減り、線路に余裕が生じるからだ。
北海道新幹線が札幌まで延伸するのは2030年。東京駅で二つの新幹線の線路を物理的につなげることは可能で、走行できる車両もすでに走っている。北陸新幹線を走る車両は50ヘルツと60ヘルツと異なる周波数に対応しているのだ(JR東日本のE7系とJR西日本のW7系)。札幌発鹿児島行きの新幹線は決して夢物語ではない。
このほか、現在5合目までの登山鉄道計画が盛り上がっている富士山には、1960年代に富士急行が地下ケーブルカー計画を立てたところ、自然保護の観点で申請を取り下げたとか、1940年、幻に終わった東京五輪の影で、東急の前身、東京横浜電鉄には「渋谷~駒沢~成城学園前」の路線計画があったなど、実現しなかった鉄道の話が興味深い。
鉄道とは関係ないが、東京五輪と同時に東京で万博が開催されることになっていたという話を披露している。会場は晴海と豊洲。驚くべきことにこの時発売された入場券がその後の大阪万博、愛知万博でも実際に使われたというのだ。大阪で3077冊、愛知で48冊。晴海と豊洲は2020年の東京五輪でもなにかと話題のエリアだ。80年の時を超えて、東京の埋め立て地が脚光を浴びようとしている。
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