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人口減のいま、働き方を変える理由がある

働き方改革

 「ワーク・ライフバランス」という言葉は最近でさえ、よく聞くようになったが、本書『働き方改革』の著者、小室淑恵さんは、2006年にその名も「株式会社ワーク・ライフバランス」を設立し、代表取締役社長を務める。これまで900社以上に「働き方改革コンサルティング」を行い、残業削減と業績向上という成果を上げている。本書は20もの企業・組織(中には中央官庁、自治体も)が名前を挙げて実例を紹介している点でユニークだ。単なる理論の書ではなく実践の書であり、同業他社の例は参考になるだろう。

 企業(組織)名と成果を見出し風にいくつか挙げてみよう。
 大東建託株式会社 「月平均で残業25%削減、売上・利益ともに増加」
 愛知県警察 「全都道府県警に先駆け、2015年度から働き方改革に着手」
 日本通運株式会社 海運事業部門 「属人化排除でメンタルストレスが大きく減少」
 岡山県教育委員会 「子どもの活躍の場は部活動だけではない」
 内閣府 「『聖域』聖域国会待機問題にも着手した働き方改革」

 働き方改革が企業競争力を上げる理由として、著者は「人口ボーナス期」と「人口オーナス(負荷)期」の違いを挙げる。日本は1960~1990年代半ばの「人口ボーナス期」においては、なるべく男性ばかりが、なるべく長時間働き、同じ条件の人材ばかりを揃えた組織が勝ったという。もうその環境は二度と戻らない。

 一方、「人口オーナス(負荷)期」においては、なるべく男女ともに働き、なるべく短時間で働かせ、なるべく違う条件の人材を登用する企業が勝つというのだ。人口オーナス期には頭脳労働の比率が高まり男女の差が出ない仕事が増える。労働力が不足するので男女どちらからも選ばれる組織が望まれる。またイノベーションを起こすにはダイバーシティ(多様性)が必要だという。

 理論的な枠組みや実践例は本書を読んでいただくとして、ここで紹介したいのは、基本的な考え方だ。たとえば「全社一斉施策を提案しない」。どんな大企業でも最初は5~10人編成のチームを3~6つだけ選んで4つのステップを回していくそうだ。つまり、1 現在の働き方を確認する 2 業務の課題を抽出 3 働き方を見直す 4 改革施策の実施 0 ゴールイメージの決定 このステップを回していく。

 「働き方改革」は、今国会の重要法案となっている。著者も早くから安倍首相にその重要性を説いてきたという。36協定が法律に格上げされ違反者には罰則が科せられることや「勤務間インターバル規制」の導入などについては著者は賛成するが、「高度プロフェッショナル人材制度」については「現状の日本社会の実態と掛け合わせた場合にはデメリットが大きい」と導入に反対する。

 最後に「働き方改革」抵抗勢力とのQ&Aで取り上げているのが「新聞記者は夜討ち朝駆けで取材し、特ダネをモノにしている」という項目だ。著者は「特ダネは自己満足。仕事熱心なつもりが、最も情報の取れない行動に陥っている」とばっさり。はたして新聞記者はどう読むだろうか。「働き方改革」が無縁だという業種や企業は生き残れない、というのが著者の主張なのだが。    

  • 書名 働き方改革
  • サブタイトル生産性とモチベーションが上がる事例20社
  • 監修・編集・著者名小室淑恵 著
  • 出版社名毎日新聞出版
  • 出版年月日2018年3月20日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・302ページ
  • ISBN9784620325088

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