石田衣良の『娼年』を原作とする映画『娼年』が、4月に公開された。2016年には三浦大輔演出、松坂桃李主演で舞台化され、話題となった。今回、同じコンビで原作の完全映画化が実現され、観る者の感情を刺激する、R18指定の衝撃作が誕生した。
著者は『娼年』を書くと決めた当時について、「数冊を世に送ったばかり。同じようなものを書くのは嫌。そこで選んだテーマが『現代の愛と性』だった」と振り返る。「大学生の娼夫が性の仕事をしていくなかで、成長していくストーリー。セックス表現からは絶対に逃げないで書きたい」と、当時の担当編集者に説明したという。
十歳のリョウは、熱を出して学校を休んでいた。「あたたかくしていい子にしてね」と言い残し、母は出かけて行った。その夜、母は帰ってこなかった。あの日の夢を繰り返し見ては、涙で頬を濡らしてリョウは目覚める。
二十歳のリョウは、世の中すべてつまらなく感じ、バーでのバイトをしながら無気力な生活を送っていた。ある日バーに現れたのは、御堂静香という四十代ほどの魅力的な女性だった。
「女なんてつまらない」と言うリョウに、「わたしがあなたのセックスに値段をつけてあげる。自分の退屈なセックスの価値を知りたくない?」と御堂静香は話を持ちかけ、リョウに「情熱の試験」を受けさせる。それは、静香が手がけるボーイズクラブで働くための試験だった。
試験に合格したリョウは、身体を売ることに迷いはあったが、「情熱」を探し、「居心地よく退屈な二十歳の檻を破れるかもしれない」と考え、娼夫になると心に決める。
リョウは何事にも無関心だった頃とは別人のように、娼夫の仕事にのめりこんでいく。御堂静香に母親の面影を重ねたのか、リョウは性の世界に魅かれ、隠れた才能を発揮する。『娼年』には、娼夫という仕事の激しさ、厳しさと、リョウの心の静けさ、優しさが共存している。
石田衣良は、1997年『池袋ウエストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞を受賞。『娼年』は、集英社から2001年7月に単行本として刊行、04年5月に文庫化され、01年の直木賞候補となった。2008年に続編『逝年』が、今年4月にシリーズ3作目・完結編『爽年』が、ともに集英社から出た。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?