2013年に河出書房新社から出た木皿泉(きざら・いずみ)の『昨夜のカレー、明日のパン』は、累計36万部を突破し、14年の本屋大賞第2位のベストセラーとなった。今回5年ぶりに、小説第2作『さざなみのよる』が同社から出た。
著者の木皿泉は、1952年生まれの和泉務と57年生まれの妻鹿年季子による、夫婦の共同ペンネーム。夫婦が出会ったのは約30年前。「トムちゃん」「トキちゃん」と呼び合う仲良し夫婦だという。2004年に夫が脳出血で倒れてから、妻が介助し、2人での執筆を続けている。
本書は、第1話~第14話で構成されている。第1話は、主人公のナスミが、癌で43年の生涯を閉じるまでのわずかな時間が描かれている。ナスミは自らの死期が迫る中、生きてきた自分を振り返り、死にゆく自分を想像する。
ナスミの死は、物語の序盤に訪れる。第2話以降は、ナスミに関わった人物、一人ずつにスポットをあて、姉、妹、夫、叔母、元彼、元彼の妻、元同僚、夫の後妻、夫と後妻の子と、視点を変えてナスミの人柄が描かれている。
ナスミが彼らとどんな関わりを持ち、彼らの中にどんな跡を残していったのか。その後に続く物語が、凜とした生前のナスミの姿を思い起こさせる。
「本当の自分にもうすぐ会えるのだ。生まれたてのときと同じ、すべすべの私。柔らかく、何にでもなれた私」と、目が開かなくなったナスミは思う。「コトバにできない、自分だけが持っているナスミのイメージを、どうすればよいのか。人が死ぬとそんなことが起こると誰も教えてくれなかった」と、ナスミを失った夫は思う。
人の死を、現実のものとして受け入れなければならない時、本書を読みたいと思う。死にゆく人、見送る人、それぞれの心の内について、温かみ、優しさを感じる言葉で表現している。
著者は、テレビドラマ「すいか」で向田邦子賞受賞。他のテレビドラマに「野ブタ。をプロデュース」「Q10」など。『昨夜のカレー、明日のパン』は山本周五郎賞にノミネートされ、後に自身の脚本で連続ドラマ化された。ラジオドラマ、アニメ映画、舞台脚本などでも活躍。
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