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週刊誌最強のコラムの書き手はこの人

不倫のオーラ

 週刊誌には雑誌の顔となる名物コラムがある。モリカケといったニュース系のネタは各誌が追うので特色は出にくい(スクープの有無はあるが)。むしろ、週刊誌の個性が出るのはコラムの方だ。

 林真理子、小林信彦、伊集院静と並ぶ「週刊文春」のラインナップは現在、最強だろう。「週刊新潮」も五木寛之、北方謙三、壇蜜と顔ぶれは豊富だが、櫻井よしこ、高山正之と癖の強い面々もいらっしゃるので、好き嫌いが分かれる。

 林真理子さんのコラム「夜ふけのなわとび」は、1554回を数える看板コラムだ。連載を1年ごとにまとめたものが単行本となり、翌年文庫化されるというシステムが完成している。本書『不倫のオーラ』(文藝春秋)は、ほぼ2017年分を収録したものだ。だからタイトルに「不倫」が入っているとはいえ、内容は穏当で、いまや女性作家の女王たる林さんの世界に安心してひたることが出来る。

 評者は毎週愛読しているので、既視感があるのだが、まとめて読み返して気がついたことがある。一つは左右へのウイングの広さだ。ご自分で保守的と思っている割には「どうもアチラ方面の方々が苦手」で、韓国や中国の悪口を生理的に受け付けないという。そう書きながら、右の人たちはキャラが非常に立っていて面白いと評価し、「左の人たちからはまるっきり無視される私であるが」と。

 二つ目は時事的な問題にも積極的に切り込む姿勢だ。文科省の前川前次官の「出会い系バー通い」を読売新聞が記事化した直後には、「全国紙が通り一遍の醜聞をやるとは本当に驚きで怒りさえわいてくる」と舌鋒鋭く批判している。

不倫で迷惑かけましたか?

 さて、タイトルにもなっている「不倫」については、昨年(2017年)話題になった斉藤由貴さん、山尾志桜里さんについて触れ、それぞれ擁護論を展開している。「斉藤さんがあなたに、何か迷惑をかけましたか、あなたに不利益を生じさせましたか」とかばい、また山尾さんについては「いつか総理になってね」と応援していたことを明らかにした上で、「私が口惜しいのは、山尾さんがこれだけ注目されている身で、どうして恋人と会うのを自粛できなかったかということ」と残念がる。不倫がいけないと言われたら、「作家は商売上がったりである」とストレートに立場を表明。中国では「渡辺淳一的女流作家」というのが林さんのキャッチフレーズだと紹介している。

 着物や食事、観劇、旅行といった身辺のことを取り上げる回も楽しいが、時に筆をもつ作家の矜持を示す。これらのバランスが長期連載の秘訣だろう

 巻末に2018年NHK大河ドラマ「西郷どん(せごどん)」の原作者として、脚本の中園ミホさんとの対談「西郷隆盛が愛した男と女」を収めている。  

  • 書名 不倫のオーラ
  • 監修・編集・著者名林真理子 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2018年3月30日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数四六判・259ページ
  • ISBN9784163908137

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