読むべき本、見逃していない?

大阪・梅田のサンケイパーラーから新しい文学が生まれた

  • 書名 小松左京全集 完全版 「小松左京マガジン」編集長インタビュー
  • 監修・編集・著者名小松左京ほか 著
  • 出版社名城西国際大学出版会
  • 出版年月日2017年12月31日
  • 定価本体4572円+税
  • 判型・ページ数四六判・368ページ
  • ISBN9784903624495

 『日本沈没』などの作品を残した小松左京(1931-2011)は、驚天動地の想像力と博覧強記の知性で、日本のSFをリードした作家だ。この知の巨人の集積を残そうとしたプロジェクト『小松左京全集 完全版』(城西国際大学出版会)は、小松左京事務所とコニカミノルタビジネスソリューションズと城西国際大学メディア学部が協同して進めてきた。2006年9月の第1巻刊行から始まり、今年(2018年)2月の第50巻で完結した。

 本書は、その49巻で、小松左京が編集長を務めた「小松左京マガジン」で行ったインタビュー29回分を収めている。対談相手は、筒井康隆氏、瀬名秀明氏、夢枕獏氏、曽野綾子氏ら作家が多いが、科学に造詣が深かった小松らしく科学者、技術者も少なくない。

 どれも興味深い内容だが、アトランダムに印象に残ったエピソードを抜粋すると......。

 1960年ころ、大阪というより日本の新しい文学の揺籃が、大阪・梅田の産経会館の喫茶店サンケイパーラーにあったようだ、と作家の福田紀一氏。司馬遼太郎、小松左京、高橋和巳らがとぐろを巻き、熱気にあふれていたそうだ。小松はラジオ大阪の原稿を書いていたという。ちなみに小松と高橋は京都大学時代、同じ文学サークルに属していた。

 小松が9年かけて書いた大作『日本沈没』でSF界の賞である「星雲長篇賞」をもらったが、同じ時期に筒井康隆氏は『日本以外全部沈没』で「星雲短篇賞」を受賞した。わずか1週間で書いたもので、タイトルをつけたのは星新一だったという。「申し訳なかった」と筒井氏。

 作家・柴野拓美氏との対談。金沢にあった旧制第四高校で柴野氏の1年上に『血液型人間学』を出して大ブームをまき起こした能見正比古氏がいた。卒業生総代を務めるほど優秀で、文系だと兵隊にとられるというので理系に進んだが、その頃から血液型の研究をはじめていたという。当時はみな胸に血液型の札をつけていた。

念力で打ち上げた放送衛星

 衛星放送WOWOWの桑田瑞松氏が明かした話。衛星の予備機が失敗すると会社は倒産する危機に瀕した1991年8月の打ち上げの前、小松とSF界の世界的な巨匠、アーサー・C・クラークが衛星をテーマに対談。「ああいうのが衛星を念力で打ち上げるパワーになった」と桑田氏。「クラーク自身は自分が生きているうちに衛星放送が実現すると思わなかった」と小松。

 どのインタビューからもあらゆることに好奇心が旺盛で、相手のこころをつかむ小松の人柄の魅力が伝わってくる。

 この全集最後の第50巻は「小松左京自伝」。これからますます光があたる作家だと思う。著作をデジタルアーカイブ化し、12年かけて刊行した関係者に拍手を贈りたい。   

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