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自民党と電通が組めば「まちがいなし」?

広告が憲法を殺す日

 ある日、国民投票が決まり、テレビCMなどを使ったPR合戦が始まる。その時どうなるか。本書『広告が憲法を殺す日--国民投票とプロパガンダCM』(集英社新書)は近未来のシミュレーションだ。

「自衛隊員に、誇りと自信を」「憲法を改正しないと、この国を守れない」。そんなCMが半年間、一方的にテレビで流れ続けるとしたら――?

CMは流し放題

 著者の本間龍さんは1962年生まれ。89年に博報堂に入社。2006年に退社するまで、一貫して営業を担当した。現在は著述業。 博報堂時代の経験から、原発安全神話を作った広告を調査し、原発推進勢力とメディアの癒着を追及してきた。

 もう一人の著者、南部義典さんは1971年生まれ。シンクタンク「国民投票広報機構」代表。2005年、民主党議員の政策秘書として国民投票法の立案に関わり、以後も研究を続ける。

 広告の現場を知る本間さんと、永田町で政治に関わってきた南部さん。二人の対談スタイルで本書は展開される。

 憲法改正には、国会で3分の2以上の賛成と、「国民投票」で過半数の賛成が必要だ。国会の関門を通過すると、次は国民投票。過半数の分捕り合戦となるが、日本の国民投票法には致命的な欠陥があるという。海外の多くの国では原則禁止となっている「広告の規制」がほとんどなく、CMが流し放題となっているのだ。

吉永小百合さんに頼めるか

 本間さんは語る。「規制がない」「自由」という言葉は聞こえがいいが、裏を返せば「カネさえあれば圧倒的な量のテレビCMを放映できる」ということだと。資金力の差が国民投票の帰趨を決めかねないと懸念する。

 投票までの期間は60~180日と非常に長い。その間にテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットを総動員した「広告合戦」が展開された場合どうなるか。豊富な資金力を持つ与党。長年密接な関係がある世界最大の広告代理店電通。両者が組んで賛成派の広告ばかりが目立つ状況となるだろうと予測する。

 反対派に資金がなくても、格安で出演してくれる有名人に頼めるのではないか、例えば吉永小百合さんとか、と南部さんが聞く。「『困ったときの小百合だのみ』を主張している人に、実際に吉永さんと交渉したことがある人間がいるのでしょうか」と本間さん。かなり具体的な話が満載なので、国民投票に興味がなかった人も手に取りやすい。

 ちなみに朝日新聞によると、17年10月総選挙で、自民党の得票率は48%だったが、議席では75%を占めた。投票しなかった人を含む全有権者に占める自民の絶対得票率は、小選挙区で25%、比例区で17%だったが、結果として全議席の6割を占めた。総務省のHPによると、憲法改正案に対する賛成の投票の数が投票総数(賛成の投票数と反対の投票数を合計した数)の2分の1を超えた場合は、国民が承認したとなる。憲法9条をめぐる改正について、各種世論調査の数字は聞き方によっても異なるが、NHKの2017年調査だと、「不要」が57%で「必要」の25%を大きく上回る。

  • 書名 広告が憲法を殺す日
  • サブタイトル国民投票とプロパガンダCM
  • 監修・編集・著者名本間龍、南部義典
  • 出版社名集英社
  • 出版年月日2018年4月17日
  • 定価本体720円+税
  • 判型・ページ数新書: 208ページ
  • ISBN9784087210316
 

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