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明治元年(1868)は13カ月あった

1868―明治が始まった年への旅

 今年(2018)は明治維新150年ということで、幕末や明治維新がちょっとしたブームになっている。ところで明治元年(1868)はどんな年だったか、イメージがわくだろうか?

 本書『1868―明治が始まった年への旅』(時事通信社)は、明治元年を月ごとに1章設け、毎日の出来事を記述した本だ。なぜ13章あるのか? それは閏月があり、4月がふたつきあったからだ。4月に続いて、閏4月。当時は一か月が現在よりも短く、こういうことが2年か3年に一度ずつあったそうだ。著者は歴史家・作家の加来耕三さん。本書から少し引用すると......。

 慶應4年(1868)元日の江戸は晴天だった。前年の10月に大政奉還が行われ、徳川慶喜は大坂城に滞在、江戸は「主」不在の正月を迎えていた。1月3日には、旧幕府軍と新政府軍が京都の鳥羽・伏見で戦闘状態に入った。戊辰戦争の始まりだ。

 1月23日に大久保利通は「大坂は外交、経済、軍事において首都に最適である」と大坂遷都を主張したが、公家の反対でつぶされた。その後、前島密らの奔走で遷都案は大坂から江戸へ変更された。

 5月、江戸でも戦火が広がる。「上野の広つ場は見物人で一ぱいだった。しかし人間は何時でも金儲けには抜け目はないと見えてそのとき握飯をこさえて一つ一銭で売っていたが、見物に来た大勢の者が腹を空らして売れる売れる、非常に売れたものだ(『漫談明治元年』」。庶民はいつの世でもたくましかったようだ。

 9月8日、改元の詔書が出され、元号が新しく「明治」となった。本書によると「御籤ヲ抽キ明治ノ号ヲ獲給フ」(『岩倉公実記』)とあり、天皇が自ら籤を引いて決めたようだ。

 11月4日、東京城に落ち着いた天皇は東京行幸の祝いとして市民に2990樽の酒と、錫のとっくり550本、するめ1700把を下賜した。市民は飲めや歌えのお祭り騒ぎで、天皇は一気に東京市民の心をつかんだという。

 歴史の教科書や小説でも明治元年は駆け足で記述され、上に書いたように戊辰戦争と元号制定について触れられるくらいだ。しかし、本書を読むと、慶應と明治、江戸と東京がこの年は混在し、まだら模様のように人々は「明治」という時代にしだいに慣れていったようだ。1年を1冊の本で描くというアイデアと、文献をもとに昨日の出来事のように叙述した著者の力量に感心した。  

  • 書名 1868―明治が始まった年への旅
  • 監修・編集・著者名加来耕三 著
  • 出版社名時事通信社
  • 出版年月日2018年2月25日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・369ページ
  • ISBN9784788715462
 

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