本書『「おひとりウーマン」消費!』(毎日新聞出版)の著者牛窪恵さんは、世代・トレンド評論家、マーケティングライターとしてテレビ出演も多い女性だ。「おひとりさま」「草食系」といったことばを広めたことでも知られる。今回のタイトルにもなっている「おひとりウーマン」とは、40・50代の独身女性をさしている。「おひとりさま」という新語が出たのは2004年頃だから、彼女たちも相応に歳をとったということだ。
少子高齢化時代にあって、彼女たちが市場を切り拓く貴重な存在になる理由は3つあるという。 1 消費好きなバブル世代(現40代半ば~50代半ば)が含まれるから 2 人口ボリュームの団塊ジュニア(現40代前半~半ば)が含まれるから 3 いまも「根拠なき自信」と上昇志向をもち、若さや自分磨きを追求しているから
統計なども活用しながら、さまざまな消費行動を紹介、予測しているが、なんと言っても著者の真骨頂は、34人の当該女性への取材を通した個別のケースの面白さにある。
たとえば、福山雅治の結婚がショック(いわゆる「福山ロス」)で、東京都内の2DK、3500万円の新築マンションをヤケ買いした女性(44)。1500万円と手数料分は15年ローンを組み、残る2000万円は貯金から即振り込んだという。掃除ロボット・ルンバのために札幌の中古マンションを買った女性(48)もいる。ルンバを「ピーちゃん」と名付け、その性能をフルに発揮すべく、じゅうたん敷きの賃貸マンションからフローリングの物件に引っ越したのだ。
旅行に自分磨きにと消費する彼女たちは、そろそろ親の介護という問題に直面しようとしている。そこで牛窪さんが提案しているのが「介護旅」だ。親と一緒にホテル、旅館に泊まり、ほんの1、2時間、介護資格をもつスタッフに親をみてもらい、その間、近隣を散歩したり、ゆったり温泉につかったりする旅を想定している。介護のため、旅行の機会が減るのを食い止める策だ。
旅行にかんしてもう一つの方向性は郊外旅や田舎旅だ。実際、一人で参加する「ソロキャンプ」の利用者を40・50代女性が4割占める例もあるという。
本書によると、2030年には全人口の約半数が「おひとりさま(独身)=未婚と死別・離別」になるという予測(野村総合研究所)もある。彼女たちが暮らしやすい社会は、男性にとっても暮らしやすい社会になるだろう。消費だけでなく、制度についても建設的な提案がされている。
ちなみに「おひとりさま」ということばを最初に提唱したのはジャーナリストの故・岩下久美子さんであることを冒頭に紹介している。そんな著書のフェアな姿勢にも好感をもった。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?