読むべき本、見逃していない?

日本一ユニーク高校の廃校ストップを賭けた写真集

いまを、生きる 北星学園余市高等学校

 おそらく日本一ユニークな私立高校が、廃校の瀬戸際に立たされている。北海道余市町にある北星学園余市高校だ。この小冊子は、何とか廃校の運命にストップをかけようと、同校を中途退学した山田恵理子さんが知り合いのカメラマンと同校写真部の生徒たちに頼んで、学校生活を記録した写真集だ。制作費はすべて山田恵理子さん個人の貯金を費やして当てられた。

あの「ヤンキー、母校に帰る」の高校が経営難に

 恵理子さんは現在、重い病気のため家の外にあまり出られない。そのため本の編集は姉の山田淳子さんが行なった。カメラマンは戸澤裕司さん。週刊誌『AERA』の名物企画「現代の肖像」で長年人物写真を撮り続けた気鋭の報道写真家だ。本の装丁・構成は三村淳さんが行なった。開高健の傑作アマゾン川紀行『オーパ!』をはじめ、渡辺淳一、東野圭吾、橋本治、劇団ひとり、恩田陸ら多くの作家の本を手がけてきたデザイン界の大御所だ。

 そんな彼らがなぜ北海道の「田舎」にある高校の中途退学生の熱い想いに手弁当で駆け付けたのか。

 北星余市高校は、全国から中途退学者や不登校の生徒たちを受け入れることで知られている。不登校になった原因は非行、ひきこもり、いじめ、発達障害などさまざま。いわば「落ちこぼれ」と呼ばれてきた子どもたちがたどりつく居場所なのだ。2003年にはTBS系ドラマ「ヤンキー、母校に帰る」の舞台となった。「ヤンキー先生」こと義家弘介氏は、その後、衆議院議員、文部科学副大臣になった。

制服がなく、どんな髪の色でもOKだと生徒はイキイキする

 制服はなく、どんな服でも髪の色でも自由だ。写真集を見ると、渋谷の繁華街にいるようなド金髪の少年少女がジャージ姿で授業を聞いたり、キャンプファイヤーをバックに男の子たちがヤンキー座りをしたりしている。校内を浴衣で歩く少女がいたり、バンダナを巻いたり、帽子をかぶったりと、服装がてんでバラバラだと、これほど生徒たちの表情がイキイキ明るくなるのか、と驚くほどだ。

 恵理子さんは小学5年から中学2年までの間、クラスの人から「汚い、近寄るな」と言われ、殺虫剤をかけられたり、靴や体操服をゴミ場に捨てられたりする、ひどいいじめを受けてきた。不登校になり、図書館通いをしていた時に、北星余市高校の本『いま君が輝く瞬間(とき)』を読むうちに、この学校なら自分も前に進めるかもしれないと思ったという。

 入学すると、先生、先輩、同級生、下宿の仲間みんなが自分を気にかけてくれた。先生から「自分に正直になりなさい」と言われた。最初は自分に正直になるとよけい傷つく、バカを見るだけと思っていたが、自分にウソをついて生きることが自分も周りも傷つけていることに気づいた。こうして恵理子さんは、同じ境遇の仲間と出会い、自分を取り戻していった。

 しかし、2年生の1学期、重度の化学物質過敏症にかかり、退学を余儀なくされた。空中に浮遊する様々な化学物質に強いアレルギー反応を起こし、外出が困難になる病気だ。

 一方、「ヤンキー、母校に帰る」のドラマ放映直後は1学年6クラスもいた北星余市高校も、ここ数年は2~3クラスに減った。広域通信制高校の増加などを背景に生徒数が減り、経営難に陥った。2016年9月、運営母体の北星学園理事会が、2017年、18年に新1年生が70人未満なら翌年以降の募集を停止し、廃校にすることを決めた。

 同校のPTAやOBたちの必死の努力が実り、2017年度の新入生は73人で、何とかクリアできた。しかし、同校の平野純生校長によると、「2018年度の入学予定者は3月13日現在61人で、9人足りません」という状況だ。このままだと、今年5月1日の理事会で廃校が決まりかねない。リミットがあと2か月に迫った段階で、恵理子さんはこの写真集を緊急出版した。

 恵理子さんに代わり、姉の淳子さんはこう語った。

 「恵理子は中途退学で卒業はできませんでしたが、自分と同じように様々な問題を抱えて普通の高校に通えない子どもたちに、居場所があるんだと伝えたいのです。特に、ウザいくらいアツかった先生方には感謝しているようです」

 そんなアツさが伝わる写真集だ。

 ※購入方法は、メールでjunyamada19820320@gmail.comへ申し込む。

  • 書名 いまを、生きる 北星学園余市高等学校
  • 監修・編集・著者名山田恵理子(発行者)
  • 出版年月日2018年3月 8日
  • 定価1500円
  • 判型・ページ数A5判・60ページ

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