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この天才なしでは、日本人も生きられない

ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険

 本書『ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険』(星海社)は「ポケモンGO」の生みの親にして、世界が最も注目する経営者、ジョン・ハンケの自伝である。訳者は明示されていないが、本書が原著となっている。つまり、今後は本書が各国語に翻訳されて世界で発売されていく。

 ジョン・ハンケは"哲学するプログラマー"とも呼ばれ、「人を動かし、人と人をつなげることで、人々を幸せにする」という理念に基づいたテクノロジーを開発し続けた。その理念が「ポケモンGO」につながったと言ってもいい。これまでのテクノロジーは、室内、というよりモニターの前に人々を縛りつけてきたが、ハンケは人々を外に連れ出すテクノロジーを作り出した。

 ハンケがこれまで関わってきた「グーグルアース」「グーグルマップ」「ストリートビュー」をはじめ、社会現象を巻き起こした「イングレス」や「ポケモンGO」まで、一貫した理念の下に生み出されたことが、本書を読むとよくわかる。ハンケが本書で語るのは単なる成功物語でも、華麗なる経歴自慢でもない。夢をかなえるためはどうしたらいいか、自分が考え実践してきた「生き方・考え方」の解説書なのだ。

子供時代から好きだったことを具現化する

 ハンケは1966年、アメリカ・テキサス州の信号機もレストランも1つずつしかない片田舎に生まれた。図書館で借りてきて読んだSF小説や映画「スター・ウォーズ」の世界に憧れる一方、発売間もないテーブルトークRPG(ロールプレイングゲーム)の「D&D」で対人ゲームの面白さに目覚める。誕生したばかりのパソコンと出会い、プログラミングに夢中になる。世界を飛び回るという夢を実現するため、大学卒業後は国務省に勤務。

 政府の仕事をしても、世界にも政府にも影響力を持てない自分を見つめ直したハンケは、自分が子供時代に熱中したコンピューター・テクノロジーの世界で仕事をしたいと考えている自分に気付く。大学に入り直しスタートアップ企業でゲームを開発しながらMBAの資格を取得。高額の報酬を求めて転職することもできたが、小さなゲーム会社で働く道を選ぶ。事業を成功させて会社を売却することを繰り返し、2000年にはグーグルアースのもとになるサービスを作り上げるキーホール社を立ち上げる。2004年に同社がグーグルに買収されて――、まさに絵に描いたような成功物語を体現していく。

 並の人間ならここで「あがり」を選んでもいいはずだ。だが、ハンケはもっと新しいことを求めて、社内ベンチャー「ナイアンテック」を立ち上げ、自らコードを書き「イングレス」の原型を開発。人を外に連れ出し、人と人をつなげる、この革命的な位置情報ゲームはやがて「ポケモンGO」につながっていく。

 子供の頃遊んだ「D&D」、本や地図を眺めて憧れた広い世界、夢中になったプログラミング......幼い頃から一貫して自分の夢を求め続け、その夢をビジネスのビジョンに取り入れてゲームの世界にイノベーションを生み出したハンケの半生には、目標達成に向けてチャレンジするためのヒントが詰まっている。

 ポケモンGOの開発にかんしては、本欄2017年8月30日付で「『ポケモンGO』生みの親は中国出身、新聞少年」のタイトルで『ど田舎生まれ、ポケモンGOをつくる』(野村達雄著、小学館集英社プロダクション)を紹介した。ナイアンテックのゲームディレクターの野村氏は、同社CEOのハンケ氏の指揮のもとポケモンGOを開発した。

  • 書名 ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険
  • サブタイトルグーグルアースからイングレス、そしてポケモンGOへ
  • 監修・編集・著者名ジョン・ハンケ著
  • 出版社名星海社発行、講談社発売
  • 出版年月日2017年11月24日
  • 定価本体価格1600円+税
  • 判型・ページ数四六版・174ページ
  • ISBN9784065105559
 

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