スマートフォンなどを使って楽しめる位置情報ゲームアプリ「ポケモンGO」は、日本ばかりでなく世界各国で社会現象となるほどのブームになった。2017年7月でリリースから1年が経過し、ユーザー数の減少が指摘されているが、夏休みを利用した関連イベントにはファンが殺到し、支持層が厚く定着していることを示した。本書は、その「ポケモンGO」生みの親の、いわば自伝。ITと無縁な「ど田舎うまれ」の青年が、最先端の技術開発に成功するまでのヒストリーは、波瀾の道のりだったことが語られている。
著者の生まれ故郷の「ど田舎」は、中国の黒竜江省(旧満州)で、祖母が同地の残留日本人。9歳だった1995年に来日し東京都練馬区内に落ち着く。新聞配達をしながら学校に通い、97年には長野に転居。日本の暮らしや文化に慣れたころにゲームと出会い、ITの道を志すきっかけになったという。
信州大学工学部から東京工業大学大学院に進んだ著者はまず、インターンを経てグーグルに入社しソフトウエアエンジニアとして勤務。同社ではグーグルマップの開発に携わった。13年に米本社に移籍し、グーグルマップでの経験を生かしエイプリルフール企画「ポケモンチャレンジ」などを手がける。これが、ナイアティックとの縁をもたらし、同社でゲームディレクターとして「ポケモン GO」開発の指揮をしたものだ。
著者が語る生い立ちによれば、子どものころは極貧なかで過ごしており、さぞつらかったのではと思わせるのだが、インタビューでは「日本では新聞を配るだけで父が中国で1年かけて稼ぐくらいのお金がもらえて、欲しいものまで買える自分は、恵まれているとすら思ってました」と屈託がない。本書で綴られる中国での幼少期の回想も淡々としたもの。こうした"無欲"さや、「好きなことを突き詰めていく」姿勢は随所で述べられ、爽やかさが感じられる。「ポケモンGO」の成功は、こうした著者の人柄があってこそ得られた支持によるのではないか。
著者はインタビューで「本書にもプログラミングの基本原理をできるだけわかりやすく書いたつもりです。自分がすきなものは、人にも好きになったほしいですから」と述べている。
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