本書の原題はPHISHING FOR PHOOLS、「カモを釣ること」である。訳者によってアダム・スミスの言葉をもじったエクセレントな邦題がつけられた。著者はいずれもノーベル経済学賞を受賞した経済学の重鎮である。はすっぱな原題とは裏腹に、実にまじめな、ある意味で学術書であり、巻末の参考文献、注などが75ページもついているほどだ。
冒頭、本書のねらいとして、「カモを釣る例をたくさん挙げて、それが私たちの生活にどれほど影響しているかを示すことだ。(中略)一部の事例は日常生活、たとえば自動車、食べ物、薬、売買したり暮らしたりする家に関連したものだ。他はもっと系統的で専門的なものになる。たとえば金融市場などだ」としている。このパートが長いし、羅列的な印象がするため、訳者の山形浩生氏は「『フォーブス』誌の書評では、本書はトリビアル、つまりどうでもいい本とまで言われている」と訳者あとがきに、率直に欧米での一部の厳しい評判を明かしている。
評者の河野龍太郎氏(BNPパリバ証券経済調査本部長)は、「本書の主張には強い衝撃を受けた。金融以外のあらゆる分野でもカモ釣りが横行しているのだ。結婚式や住宅購入など、人生の特別な買い物はカモ釣りの絶好の機会」と記し、好意的である。
経済学的にも大きな意味があると評価する。「本書がこれまでの経済学と大きく異なるのは、自由な競争市場にカモ釣りを促すメカニズムが内在すると主張する点だ」
学問的な評価はともかく、著者と評者の表現を借りるならば、金融市場でこそ、もっとも「カモ釣り」が行われているということだ。さもありなん。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?