大ベストセラーというわけではないが、それなりに人気がある。実際にそういう人が少なからずいるからだろう。
本書『他人をバカにしたがる男たち』(日本経済新聞出版社)の主たる標的は中高年だ。帯にはもっとはっきりと「職場にはびこる『ジジイの壁』の正体」とある。2007年8月刊で5刷になっている。
駅やコンビニで暴言を吐く、反論できない立場の人に対しては高圧的、相手の肩書や学歴で態度がコロッと態度が変わる・・・。もちろん、ひどいケースについてはネットでも暴露され恥をかく。最近では、コンビニのアジア人従業員に「日本語わかってる?」と執拗に絡んだ男性の話があちこちで取り上げられた。
こうした「ちょっと困った人」は確かにあちこちで目にする。「社内で残念なひとほど、社外で偉そうにする」「大企業の男ほど勘違いしやすい」「過去の栄光が華々しい人ほど老害になりやすい」などという本書の紹介例を見て、身近な誰かを思い浮かべる人も少なくないのではないか。
本書では「ジジイ」を、「自分の保身のため」だけを考えている人、組織内で権力を持ち、その権力を組織のためではなく「自分のため」に使う人だとしている。40代からこうした「予備軍」が生まれ始め、女性も「ジジイ化」と無縁ではないことなども指摘している。
また、イライラ中高年が増えた背景として、1980年代後半から米国型の成果主義があちこちで取り入れられ、リストラも増えるなどして、企業で働く人たちが不安を感じやすい社会状況が生まれていることも指摘している。
「昔から「老害」という言葉はあった。戦前は「軍人」が威張っていた。戦後も長く「男尊女卑」の傾向が残っていた。近年、「困った男たち」が取りざたされるようになった背景には思想としてのフェミニズムの影響が無視できないだろう。かつては許容され黙認されてきたことが批判される時代になった。そうした社会の変化に鈍感な「古い男」たちがヤリ玉に上がる。
その意味では本書は先日、BOOKウォッチで紹介した『パワハラ・セクハラ・マタハラ相談はこうして話を聴く』(経団連出版)と重なる部分がある。ハラスメントに無神経では、もはや「出世」はおぼつかない。
終身雇用、年功序列に支えられた日本的経営が過去のものになり、ストレスが増える。給料が上がらないので、「一家の柱」だったプライドが揺らぐ。小言や説教、軽い冗談のつもりが、ハラスメントとされる。「他人をバカにしたがる男」とは、時代に適応できない悲しい男たちの代名詞といえる。
著者の河合薫さんは気象予報士を経て、東大医学系大学院で学び、「人の働き方は環境がつくる」をテーマに研究。600人以上のビジネスマンをインタビューし、『<他人力>を使えない上司はいらない!』など多数の著書がある。
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