著者の月村了衛と言えば、メカニックな新型機甲兵装をまとった警視庁警察官が活躍する『機龍警察』シリーズが有名だ。『機龍警察 自爆条項』で2012年、日本SF大賞を受賞している。その月村のもう一つの貌が時代小説家である。本作とつながりはないが、大藪春彦賞の『コルトM1851残月』ほか、いくつかの時代小説を発表している。
本書『コルトM1847羽衣』(文藝春秋刊)の主人公は、幕末の女侠客、お炎である。このお炎がめっぽうかっこいい。コルトM1847は銃身の長い6連発銃。1847年に作られたコルト銃ということだ。幕末と時代設定は合う。これを背中にしょって、単身佐渡へ乗り込む。結婚を誓った恋人・信三郎が佐渡の金山にいるのではと島に渡ったのだ。いきなり襲われるが、連発銃の威力で事なきを得る。
佐渡の金山では、「オドロ様」という邪教が広まっていた。しかし、金の産出量が3倍に増えたとあって奉行も手出し出来ない状況となっていた。信三郎ははたして無事なのか、捜索を続けるお炎に次々と刺客が襲いかかり、コルトが火を噴く。
孤島で奮闘するお炎を姉御と慕う軽業師のおみん、お炎のため長崎の豪商が派遣してくれた裏稼業の男たちの助けを得て、次第に真相が明らかになる。
信三郎はもともと薩摩藩江戸屋敷で御留守居役を務める青峰忠治の三男だった。薩摩の藩士、密偵らも暗躍し、後半はスケールの大きな活劇シーンが連続する。
江戸時代の佐渡の金山をモチーフにした映画と言えば1969年公開の「御用金」(五社英雄監督、東宝)が思い起される。佐渡でとれた金を江戸の幕府まで運ぶ御用船がモチーフだった。本書でも御用船が物語の鍵となる。江戸時代、世界最大級の金山があった佐渡。活劇の舞台としては、もってこいだ。(BOOKウオッチ編集部 JW)
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