空き家が増えているそうだ。2014年度は全国で820万戸。空き家率が13.5%に上るという。住む家がない人もおれば、家を放置している人もいる。にわかに理解しがたい現象だが、本当らしい。本書『空き家対策の処方箋』(日本地域社会研究所)は空き家を持っている人や空き家対策をしなければいけない関係者向けの手引書だ。
全国で820万戸と言っても内実は様々だ。一般的に都市部よりも地方に多い。故郷で老親が住んでいた実家が、親の死後、手付かずになっている、というケースが少なからずあることは想像できる。過疎化と高齢化。いわゆる「限界集落」などは、こうした空き家だらけといわれる。
ただし、地域差もある。空き家比率が高いのは山梨県や長野県で20パーセント前後に達している。その理由は別荘だ。とにかく長期間、借り手がいないと、統計上は空き家になってしまう。持ち主が亡くなる、あるいは所有者が代替わりしているうちに老朽化し、資産価値が落ちて放置されているケースもありそうだ。
田舎だけでなく、都市部でも増加傾向は変わらないという。知らない人が勝手に住み着いて不審者のたまり場になる、ゴミ捨て場と化す、あるいは犯罪で騒ぎになることもありうるわけで、防犯上も好ましくない。空き家は地域の生活環境を乱しかねないのだ。伸び放題の雑草や樹木も、迷惑だ。
地方自治体の中には以前から手だてを検討してきたところもあるが、国も16年に空き家対策の推進に関する特別措置法をつくり、対策に乗り出した。その中で最大のポイントは、「特定空家等に関する特別措置」がうたわれていることだ。市町村長から「特定空家」と認定されると、課税上の優遇措置が取られなくなる。固定資産税が跳ね上がり、さらに代執行で取り壊される可能性もある。
本書はこうした空き家をめぐる最近の動きを丁寧にまとめ、対策や手だてをアドバイスしている。空き家といっても、財産にからむ話なので権利関係が複雑になって、手付かずというケースも多そうだ。借地借家、相続のもつれなどについても詳述されている。空き家の活用法、その具体例なども多数紹介されているので、参考になりそうだ。著者の玉木賢明さんは弁護士。「一般社団法人全国空き家相談士協会」の副会長を務めている。
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